2013 Fiscal Year Research-status Report
新興アルボウイルスの牛に対する病原性の病理学的研究
Project/Area Number |
25450435
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田中 省吾 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所温暖地疾病研究領域, 主任研究員 (10355216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁瀬 徹 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所温暖地疾病研究領域, 主任研究員 (90355214)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルボウイルス / 牛胎子由来培養筋芽細胞 / 感染親和性 |
Research Abstract |
筋芽細胞に対するアルボウイルス感染の親和性を比較・検討するため,胎齢の異なる牛胎子の骨格筋由来培養細胞系を確立するとともにアルボウイルス接種実験を試み,以下の結果を得た。 1.牛胎子骨格筋由来培養細胞系の確立:胎齢早期,中期及び後期の牛胎子大腿部骨格筋から得られた細胞は,いずれも培養開始後24時間でシートを形成し,3日目からは筋細管と思われる合胞体の形成が観察され,骨格筋由来の筋芽細胞であることが示唆された。 2.免疫組織化学的染色による筋芽細胞マーカーの検出:培養細胞が筋芽細胞であることを証明するため,培養した細胞を筋分化転写因子である抗Myogenin家兎ポリクローナル抗体と横紋筋マーカーの抗デスミンマウスモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的染色を実施した結果,いずれの培養細胞の核にも抗Myogenin抗体に対する陽性反応が認められ,合胞体を形成する形態的特性を有する骨格筋の筋芽細胞であることが証明された。また,培養3日目以降に形成された合胞体では,抗Myogenin抗体とともに抗デスミン抗体にも陽性となり,培養細胞が横紋筋へ分化する性状も確認された。 3.牛胎子骨格筋由来培養筋芽細胞を用いたアカバネウイルス接種実験:筋芽細胞であることが証明された上記細胞にアカバネウイルスを接種し,増殖したウイルスの遺伝子量をリアルタイムRT-PCR法で計測した。ウイルス接種濃度が高い場合,胎齢中・後期の細胞で36時間にウイルス増殖がピークを示した。一方,胎齢早期の細胞では,接種後24時間でもっともウイルス遺伝子量が多く,時間とともに減少する傾向がみられた。免疫組織化学的染色により感染筋芽細胞内に多数のアカバネウイルス抗原が検出された。今後,本牛胎子由来培養筋芽細胞を用いて,ピートンウイルスやシャモンダウイルス等の新興アルボウイルスについても増殖動態を比較・検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は,牛胎子骨格筋培養細胞を用いた新興アルボウイルスの筋組織に対する感染親和性の検証である。牛胎子の骨格筋におけるアルボウイルスの感染親和性を簡便にウイルス種間で比較するためには,牛胎子由来培養筋芽細胞を用いたin vitro実験系の確立が不可欠である。と畜場から様々な胎齢(胎齢84日,150日及び216日)の牛胎子を入手することができ,骨格筋細胞の初代培養を試みた結果,筋細管と思われる合胞体形成能を有する培養細胞系を確立することができた。また,筋芽細胞の証明となる筋分化転写因子であるMyogeninの局在を免疫組織化学的手法により明らかにし,横紋筋マーカーであるデスミンを発現することからも確立した系が筋芽細胞であることが証明された。さらにアカバネウイルスが本培養細胞系で増殖可能であることを遺伝子学的及び免疫組織化学的に証明できたことは,本年度の到達目標をおおむね達成していると考える。 今後,確立した培養筋芽細胞系を用いて実施されていないピートンウイルスやディアギュラウイルス,シャモンダウイルス等の新興アルボウイルスの感染実験を継続し,アカバネウイルスとの比較により新興アルボウイルスの病原性の相違について検討する。また,一部の感染筋芽細胞を用いて,透過型電子顕微鏡による形態的特徴を明らかにすることも残された課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度確立した培養筋芽細胞系で感染することが証明されたアカバネウイルスの感染動態と比較するため,ピートンウイルスやシャモンダウイルス,ディアギュラウイルス等の新興アルボウイルスがどのような感染動態を示すか,確立された培養筋芽細胞を用いてin vitro感染実験を引き続き実施し,遺伝子学的・免疫組織化学的手法により感染親和性の検証を行うとともに,透過型電子顕微鏡による感染筋芽細胞内でのウイルスの形態的特徴を明らかにする。 また,次年度以降における牛胎子への新興アルボウイルス感染実験による異常産発症の検証を行うため,現在,繁殖雌牛の性周期同期化と人工受精による牛胎子の作出を実施している。受胎が確認された雌牛については,胎齢中期(胎齢100~200日)の牛胎子に外科的に子宮外からフィンガーチップ型探触子で胎子大腿部にアルボウイルス液を筋注する。娩出あるいは帝王切開により搬出された新生子について,中枢神経や骨格筋を主体に各種臓器からウイルス分離とRT-PCR法によるウイルス遺伝子の検出を試みる。また,病理解剖学的及び病理組織学的に精査し,体形異常及び中枢神経系や骨格筋に形成された病変を検索し,病変の種類や分布,程度を観察し,ウイルスの病原性の立証を試みる。さらに病変形性部位について,抗新興アルボウイルス抗体を用いた免疫組織化学的染色によりウイルス抗原を検出し,ウイルス増殖部位を検索して病変形性とウイルス感染との関連を解明する。
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