2013 Fiscal Year Research-status Report
犬と猫の糸球体腎症における病態機序の解明と新規診断・治療マーカーの探索
Project/Area Number |
25450446
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
矢吹 映 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (10315400)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 犬 / 糸球体腎症 / 免疫複合体 |
Research Abstract |
本研究では、伴侶動物(特に犬)の糸球体腎症の病態機序の解明を目的とする。平成25年度はサンプル採集と免疫複合体の沈着様式の解析を行った。 1.サンプル採集:新たに2例の犬について腎生検を実施し、詳細な病理学的検査を実施した。診断は光学顕微鏡、電子顕微鏡および免疫組織化学的所見に基づいて行った。検査の結果、1例は腎アミロイドーシスと診断された。光学顕微鏡検査ではHEおよびPAS染色においてほとんどの糸球体が均質無構造物質に置換されており、この物質はコンゴーレッド染色により橙色に染色された。1例は膜性増殖性糸球体腎炎(I型)と診断された。光学顕微鏡では糸球体にメサンギウム陥入と基底膜の二重化が観察され、電子顕微鏡ではこれらの所見に加えてdens bodyの沈着、足突起の広範な癒合が認められた。 2.免疫複合体の沈着様式:これまでの収集した犬の糸球体腎症に上記の膜性増殖性糸球体腎炎を加えた8例のサンプルで解析した。内訳は、膜性腎症2例、膜性増殖性糸球体腎炎5例、巣状性糸球体硬化症1例である。免疫複合体は、IgG, IgA, IgM, 補体C3について検索した。上記の膜性増殖性糸球体腎炎のサンプルは未固定凍結切片による蛍光抗体法で検出を行い、その他のサンプルはパラフィン切片による酵素抗体法(標識ストレプトアビジン法)で行った。解析の結果、全ての症例に共通する所見としてIgMと補体C3の沈着が認められた。次いで、IgGの沈着が多く、IgAは明瞭な陽性反応を示すものは1例のみであった。観察結果から、膜性腎症はIgGの沈着が強いこと、膜性増殖性糸球体腎炎はIgGおよびIgAの沈着に一貫性がないこと、巣状性糸球体硬化症はIgGとIgAの沈着が認められないことが示唆された。この結果は、ヒトの糸球体腎症の免疫複合体の沈着様式に類似していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は腎生検サンプルの採集と病態解析、および糸球体腎症における免疫複合体の沈着様式の解明を計画していた。腎生検サンプルは2例追加され、これは当施設ではほぼ例年通りの数であり、いずれも光学顕微鏡、電子顕微鏡および免疫染色により詳細な病態解析が実施できた。免疫複合体の解析についても順調に進行し、過去に集積した症例と合わせて8例が終了した。パラフィン切片での解析では、条件設定の予備実験に時間を費やしたが、良好な染色結果を得られるようになった。しかしながら、IgGとIgAについては、やや非特異反応が強く更に検出法を改良する余地があると考えられ、計画以上の成果までは達しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き腎生検サンプルの収集と詳細な病理解析を継続して行うとともに、犬および猫の糸球体腎症の病態メカニズムの解明のための分子病態学的検索を行う。 平成26年度には、蛋白尿の発現メカニズムとして重要な糸球体スリット膜関連分子の解析を行う。具体的には、ネフリン、ポドシン、CTN14といった分子について検索を行い、どのような型の糸球体腎症でどのような分子の発現の異常が病態の発現や重症度に関連するのかを明らかにする。また、前年度の検索の課題として、パラフィン切片での酵素抗体法による免疫複合体の検出に非特異反応があるため、パラフィン切片での蛍光抗体法の応用など更に特異的な検出法を求めて改善を行う。
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