2013 Fiscal Year Research-status Report
輸血副作用を惹起する血液型抗原エピトープ群の構造解明と遺伝子検査法の開発
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25450454
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
近江 俊徳 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (40296091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 修一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (20217326)
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50343611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血液型物質 / 輸血副作用 / ゲノムワイド関連解析 / 責任候補遺伝子 / 遺伝子発現解析 / イヌDEA式血液型 / ネコAB式血液型 |
Research Abstract |
本研究課題では、輸血後の急性あるいは遅延性溶血など輸血副作用の要因とされる、イヌDEA式血液型およびネコAB式血液型の血液型物質について、その責任遺伝子の同定や抗原エピトープの構造解明などの分子基盤を整え、血液型輸血不適合の予防・病態・治療など臨床領域への展開を目的としている。 今年度は、1)既に当研究室で行っている血液型別のゲノムDNAバンク構築を継続的に実施した。その過程で、我が国で飼養されているネコ348例についてAB式血液型の抗原分布を調査し、CMAH遺伝子変異によって発現されるといわれているB型抗原を有するネコ個体18例を同定した。また、B型の頻度は品種により異なる傾向が示唆された。一部の個体については既報のCMAH変異部位の遺伝子型を解析した。その結果、これまでに報告されていない遺伝子型が複数個体で検出され、新規のB型対立遺伝子の存在を明らかとした。2)ネコ各種臓器由来のtotal RNAとRT-PCR法を用いた、CMAH遺伝子のmRNA発現解析では、当該遺伝子はユビキタスに発現していることを明らかにした。3)ゲノムワイド関連解析(GWAS)によるイヌのDEA1.1血液型の責任遺伝子の同定の試みについては、赤血球抗原陰性および陽性のイヌ個体由来ゲノムDNAを試料とし、ゲノム全体を包含する約17万SNPの解析が可能なCanineHD BeadChip (illumina社)を用いて得られた遺伝子型情報(当研究にて実施済み)を基に、SNP解析ソフト(Golden Helix社)により、赤血球抗原陰性群および陽性群の2群間について各SNPの遺伝子型頻度の差異を統計学的に解析した(1次スクリーニング)。その結果、いくつかの染色体上で当該責任候補遺伝子領域が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である、輸血副作用を惹起する血液型抗原エピトープ群の構造解明と遺伝子検査法の開発は、輸血後の急性あるいは遅延性溶血など輸血副作用の要因とされる、イヌDEA式血液型およびネコAB式血液型の血液型物質の責任遺伝子の同定や抗原エピトープの構造解明などの分子基盤を整える必要がある。 今年度は、当研究室でルーチン化している血液型別のゲノムDNA収集も順調に行われ、その中にはCMAH遺伝子異常でネコ集団の約5%とされるB型ネコ個体のゲノムDNAも含まれ着実に血液型別ゲノムバンクの構築が進展した。さらにネコCMAHの遺伝子解析により、現在報告されている遺伝子情報と合致した検体の他に遺伝子型と表現型の不一致例が複数個体で認められ、遺伝子検査法の開発にとって重要な試料を得た。また、イヌのDEA1.1血液型の責任遺伝子の同定では、GWAS解析により得られた膨大な遺伝子型情報の統計学的解析を実施し、候補領域を見出すことができるかどうかを目的としたが、いくつか責任候補遺伝子領域を抽出でき翌年度研究へと展開できる準備が整った。 以上より、今年度の研究計画は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進は、これまでの血液型別ゲノムバンクの構築を継続的に行うとともに、イヌDEA1.1血液型の候補遺伝子の同定については、染色体候補領域を絞り込んだ複数の領域を基にゲノム解析を進め、よりDEA1.1陰性に関連した領域を同定するため、詳細なSNP解析および塩基配列の解析を行う。ネコのAB式血液型については、CMAH遺伝子の全構造解析の終了を目指す。 具体的かつ重点的な実験計画としては、1)イヌDEA1.1血液型責任遺伝子の同定のための候補領域のゲノム解析:平成25年度のGWAS解析の分析により絞り込んだ候補染色体領域のうち、DEA1.1陽性由来ゲノムと陰性由来ゲノム間の比較で有意差が認められた領域について再度セカンドパネルを用いたSNP解析によりイヌDEA1.1責任候補遺伝子絞り込みを実施し、さらに血液型ごとに標的遺伝子の塩基配列決定および表現型との比較解析を行うことにより、血液型特異的変異部位の特定を目指す。2)ネコAB式血液型関連遺伝子CMAH遺伝子の構造解析の推進:既報と合致する遺伝子型を有するB型ネコおよびA型ネコについてはCMAH遺伝子の全塩基配列を決定(推定100kb)し、血液型遺伝子のゲノム配列の構造的特徴を明らかとする。また、新規の変異部位を有する可能性のあるB型ネコについては、cDNAのクローニングとゲノム解析の両面から解析を行い変異部位の同定を試みる。 なお、前年度あるいは今年度に得られた研究成果のうち公表できるものについては、学術集会あるいは学術誌等での成果発表を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では、輸血副作用を惹起する血液型抗原エピトープ群の構造解明と遺伝子検査法の開発は、輸血後の急性あるいは遅延性溶血など輸血副作用の要因とされる、イヌDEA式血液型およびネコAB式血液型の血液型物質の責任遺伝子の同定や抗原エピトープの構造解明などの分子基盤を整えるため、ネコとイヌの血液型を判定後ゲノムDNAを収集している。平成25年度の計画の後半で、表現型と遺伝子型が一致しない個体を収集し一部解析を行ったが、さらにまとまった例数で詳細な遺伝子解析を一括して実施するため、研究の効率を考慮し経費の一部を繰り越した。 平成25年度の配分予算より次年度(平成26年度)に繰り越した予算は、平成25年度に収集したゲノムDNAの遺伝子解析に必要な、遺伝子増幅試薬の購入に充てる。
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