2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
乗峰 潤三 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (30627667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 牛白血病ウイルス / 抵抗性 / MHC class II / DRB3 |
Research Abstract |
初年度の研究計画として、1)蔓延しているBLV株の全塩基配列の決定、2)牛MHCclass IIの型の決定、3)リアルタイムPCRによる感染ウイルス量の測定、を挙げた。<宮崎県における牛白血病ウイルス感染状況の把握>牛白血病ウイルス感染症の状況の把握のため、ELISA法とnested-PCR法で確認後、感染ウイルス量を測定するためのリアルタイムPCRを行った。また、感染母牛から子牛への垂直感染の頻度についても検査を実施した。検査した農家は、東臼杵郡美郷町1戸 (59頭)、児湯郡尾鈴地区 (都農、川南)101戸 (1641頭)、日南市3戸 (319頭)、串間市4戸 (216頭)の109戸で、宮崎県内4地区に位置する。その結果、牛白血病ウイルスの感染率は、児湯郡尾鈴地区で4.1% (68/1641)、その他の地区で37.4% (222/594)と、尾鈴地区では他の地域に比べ極めて低かった。調査数や地区に偏りがあるため、今後検査対象を拡大する必要があるが、全国での感染率が35.2%である事からも、尾鈴地区での感染率は低いと考えられた。牛白血病ウイルス感染母親から子牛への垂直感染は、本研究では27% (4/15)となり報告されているより多少多い結果となった。 <牛MHC class IIタイピング>日南の1農家(牛白血病ウイルス陽性:30/42)および美郷町の1農家(陽性:16/59)でDRB3のRFLPタイプを決定した。その結果、リンパ球増多少抵抗性であるRFLP11(DRB3*0902)をもつ牛は7頭であり、いずれの牛もELISA陰性か極めて低いウイルス量であり、リンパ球増多症の牛はいなかった。 <ウイルス量の測定>和牛においては、ウイルス量の極めて多い感染牛が散見されたが、DRB3*0902を持つ牛では、いずれも低いウイルス量に留まっていた。検体数が十分ではないので、これからさらに検体数を増やしていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画である1)蔓延しているBLV株の全塩基配列の決定、については遺伝子配列の一部を終えたのみである。しかしながらユニークな配列をもつ株を見つけており、今後の新たな展開が望める。2)牛MHCclass IIの型の決定、については、極めて順調に進んでおり抵抗性の型であるDRB3*0902についてもおおよその予測通りの頻度で現れることがわかった。3)リアルタイムPCRによる感染ウイルス量の測定、についてはDRB3*0902を持つ牛がリンパ球増多症にならないという事、およびウイルス量が極めて少ない事が、日本和牛においても確認されつつある。これは今後数をふやしていく必要がある。全体的な達成度としては、予定より幅広い地域で数多くの牛の血清学的診断を行い事ができた。すなわち、予定より大幅に多い数の牛白血病陽性の血清およびDNAが入手できた。これらの仕事は、酪農、和牛農家の協力なしでは何もできないが、農家や現場獣医師の協力も極めて良好で、本研究達成のための環境が整った。以上のことから、本研究の現在までの達成度を、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き県内の調査を行うとともに、数地域からとれた株のBLV全遺伝子配列を決定する。また、それに基づくBLV の構造蛋白の組換え蛋白の作製を行っていく。まず、env とgag 遺伝子をPCR 増幅し、発現ベクターにクローニングする。また無構造蛋白についても、同様の方法で、組換え蛋白を作製し抗原性の有無を検査する。抗原性が確認された場合、env やgag と同様に、その精製蛋白からエピトープの同定へと進む。CD4+T細胞エピトープを含む領域を決定するために、まず感染牛のPBMC を全BLV 蛋白で1週間培養し、増殖した細胞をさらにマイトマイシンC 処理した自己PBMC と一緒に培養し(抗原無しでT細胞を休ませる)、この2週間培養細胞をエピトープ反応細胞として使っていく。必要なときに、いつでもBLV感染牛の血液が得られる環境を整えていく。エピトープを特定するため、合成ペプチドを作製し、同様の実験を重ね、最終的な(15アミノ酸程度の)CD4+T細胞エピトープを決定する。決定されたそれぞれのCD4+T細胞エピトープについて、293細胞に牛MHC class IIとCD80(あるいはCD86)を発現させた人工の抗原提示細胞を使って、エピトープを提示しているMHC class II分子を同定する。すなわち、293細胞にMHC class II アルファ鎖、ベータ鎖、そしてCD80をコトランスフェクションした細胞をマイトマイシンC処理して抗原提示細胞として使う。またMHC class IIタイピングの過程で、新しいMHC class IIが見つかる事が十分に考えられるので、その都度そのMHC class IIをクローニングし、発現ベクターのレパートリーを増やしていく。MHC class II発現の有無は、特異モノクローナル抗体を使ってフローサイトメトリーで確認する。以上、ほぼ計画通推進する予定である。
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