Outline of Annual Research Achievements |
野生動物の行動の研究は,これまで直接観察法が主体であった.しかし,多くの野生動物は人間を忌避し,直接観察が困難な場合が多い.生体に超小型ビデオカメラを装着し,動物側から撮影し情報を収集することで,生息環境,採食物の種類や量,個体間との関係について,詳細に情報収集することが可能となる.今年度は,開発した機材をツキノワグマ7頭,ニホンザル3頭を捕獲し首下に装着した.開発に用いたカメラの重量は39g横 45mmx縦22mmX奥行19mmで,PICマイコンは12F683(Microchip社製)を使用し,プログラムにより,電源ON/OFF,撮影開始/停止,赤外線LED照明の制御を行った.カメラとバッテリー,基板の収容は,強度の高いポリカーボネート製の防水ケースを使用した.外部ケースにVHF電波発信器と脱落装置,Timed collar releaseをベルトに装着した.開発した機械の重量は,行動への影響,動物福祉を考慮し,体重の5%以内になるよう遵守した.撮影スケジュールは,ツキノワグマの場合,最初の3日間は18分間撮影(12回/日×3日×30秒),その後は1日あたり72分(6回×24時間×30秒)ずつ記録を行った.ニホンザルの場合,朝6時から夕方6時の12時間を30分間隔で5分間撮影させた.120分/1日のスケジュールで,1週間撮影した.クマ1頭については,ビデオカメラをの回収に成功した.映像データ解析を行った結果,生息環境,採食物,個体間の関係のデータを入手することができた.採食物は,6種が確認できた.採食物の割合を分析したところ,シカの死体を捕食している映像が77.8%で認められた.シカの死体捕食が増加している可能性がある.来年度も,引き続き対象種にビデオカメラを装着し,画像データを収集し解析を行う予定である.
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