Outline of Annual Research Achievements |
直接観察法による野生動物の行動観察は,一部の地域を除き動物が調査員を忌避することが多くデータの収集は困難な場合が多い.捕獲した個体の首下に超小型ビデオカメラを装着し,動物側から動画を撮影することで,生息環境,採食物の種類や量,個体間との関係について,情報収集することが可能である.今年度は,開発した機材をツキノワグマ15頭,ニホンザル7頭を捕獲し首下に装着した.使用したカメラは,これまで使用していた機材をさらに小型化し,重量は39g横 45mmx縦22mmX奥行19mmで,PICマイコンは12F683(Microchip社製)を使用し,プログラムにより,電源ON/OFF,撮影開始/停止,赤外線LED照明の制御を行った.機材の収容はポリカーボネート製の防水ケースを使用した.外部ケースにVHF電波発信器と脱落装置をベルトに装着した.撮影スケジュールは,ツキノワグマの場合,最初の3日間は18分間撮影(12回/日×3日×30秒),その後は1日あたり72分(6回×24時間×30秒)ずつ記録を行った.ニホンザルの場合,朝6時から夕方6時の12時間を30分間隔で5分間撮影させた.120分/1日のスケジュールで,1週間撮影した.クマ7頭について,ビデオカメラを回収した.映像データ解析を行った結果,生息環境,採食物,個体間の関係のデータを入手することができた.採食物は,18種が確認できた.採食物の割合を分析したところ,シカなど獣類を捕食している映像が47.8%,昆虫(アリ,ハチ)を捕食している映像が19.2%で認められた.昨年と同様にシカの死体捕食が増加している可能性が考えられた.ニホンザルでは,5頭のカメラを回収した.採食物は,12種が確認できた.採食物の割合を分析したところ,草本類の採食映像が12%,クズ21%,昆虫(甲虫)1%を捕食している映像が認められた.
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