2014 Fiscal Year Research-status Report
BmMLVの安定的遺伝子発現機構の解明と遺伝子発現ベクターの開発
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25450482
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
岩永 将司 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40400717)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | BmMLV / マキュラウイルス / カイコ / 持続感染 / 培養細胞 / チモウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
Bombyx mori macula-like virus(BmMLV)は、カイコ培養細胞から発見された新規の持続感染型RNAウイルスであり、無病徴の持続感染型の増殖様式を有するウイルスである。そこで本研究ではBmMLVの増殖メカニズムを解明することで、本ウイルスを新たな外来タンパク質発現ベクターとして利用することを目指す。 本年度はまず、昨年度に転写開始点の50塩基上流まで同定したBmMLVのサブゲノミックプロモーターの解析を進めた。その結果、転写開始点の50塩基上流までの領域は確かにプロモーター活性を有するものの、レポーターアッセイの結果、その活性はアクチンのプロモーター活性などに比べると決して高くはないことが明らかとなった。そこで、本ウイルスの転写するサブゲノミックRNA(sgRNA)を全て同定することを目的として、種々のノーザン解析とprimer extension解析を行った。その結果、従来考えられていたsgRNAの他に、新たなsgRNAが存在することを明らかにした。新たに見出したsgRNAには機能未知の推定ORFが見出された。しかしながら、当該ORFの推定アミノ酸配列に基づく抗体を作製した結果、本ORFの翻訳産物である推定タンパク質を確認することは出来なかった。本sgRNAはチモウイルス科で未報告であり、加えてタンパク質へと翻訳されていない可能性があり興味深い。 一方で、BmMLVを発現系として利用する場合には、その安全性が非常に重要である。BmMLVに関しては熱やUVによる不活化が可能であるものの、これらの手法では発現タンパク質を変性するおそれがある。そこでγ線によるウイルスの不活化を検討した結果、10kGyの照射によって本ウイルスが不活化されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、持続感染型のRNAウイルスであるBmMLVを外来タンパク質発現ベクターとして利用することを目的としている。そのため、目的のタンパク質の発現量を左右するプロモーター領域の特定、また本ウイルスの安全性は非常に重要である。 本年度は、BmMLVの感染過程で作られるサブゲノミック(sg)RNAの同定を試みた。その結果、新たなsgRNAを同定しただけでなく、sgRNAにコードされるORFの推定タンパク質の抗体を作製し、この推定タンパク質の検出を試みた。しかしながら、本推定タンパク質の検出には至らなかった。 一方で、近年、蚊からBmMLVに近縁のウイルスが検出されただけでなく、ミツバチからもBmMLVに近縁のMLVが検出されている。これらの報告は、BmMLVの属するマキュラウイルスが昆虫―植物間において、幅広く存在していることを示すものである。そのため、本ウイルスの宿主域の決定や不活化法の確立は喫緊の課題である。そこで本年度はBmMLVの不活化条件の確立にも取り組み、γ線照射による簡便なウイルス不活化法を確立することができた。 これらはBmMLVの増殖メカニズムの解明に寄与するだけでなく、発現ベクターとして考えた場合の安全性という側面においても重要な結果であると考えられる。以上より、本年度は、概ね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は①サブゲノミックプロモーターを利用した遺伝子発現系の開発、②RNA-seqを利用したBmMLV感染細胞のトランスクリプトーム解析を進め、本ウイルスと宿主の相関を明らかにし、遺伝子発現ベクターの開発に繋げたいと考えている。
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