2013 Fiscal Year Research-status Report
チクシトゲアリ創設女王どうしの協力行動の適応的意義と生体アミンが行動に与える影響
Project/Area Number |
25450483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 俊幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80242238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 哲史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10549637)
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 准教授 (40387353)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 協力行動 / 血縁 / 生体アミン / オクトパミン / 栄養交換 / 敵対行動 |
Research Abstract |
チクシトゲアリは血縁のない創設女王どうし栄養交換・共同育児しコロニーを創設することがあるが、成熟したコロニーでは単女王となり、女王は攻撃的になる(Sasaki et al.1996; Sasaki et al.2005) 。本研究では、血縁のない創設女王どうしの協力行動の適応的意義、生理的メカニズムを飼育実験と行動観察により明らかにする。 まず、創設女王は越冬後、協力行動が一緒に越冬した巣仲間かどうかで変化することを明らかにした(Hashimoto et al. 2013)。次に、2013年10月と2014年2月に静岡県下田市で採集調査を行い、創設女王を越冬前と越冬後で採集した。先行研究により、成熟した巣では女王の脳内オクトパミン濃度が高いことが分かっている。そこで、オクトパミン経口投与がチクシトゲアリ創設女王の協力行動を低下させるかどうか、飼育実験と行動観察により明らかにした。10月に採集した創設女王を2個体ランダムに抽出してペアを作り、2群に分け、片方の群では、女王にオクトパミンを2㎎/mlの濃度で含むショ糖10%水を経口接収させ、もう片方の群では、女王にショ糖水のみを与え、創設女王どうしペアにして人口巣に入れた。オクトパミン非投与群では、創設女王どうし栄養交換が起こるが、オクトパミン投与群では栄養交換行動の頻度と持続時間が低下し、通常みられない創設女王どうしの敵対行動が観察される場合もあった。実験終了後、女王の脳内オクトパミン濃度を測定したところ、オクトパミン投与群で有意にその濃度が高かった。以上の結果は、オクトパミンが、協力から敵対への行動変化を引き起こす候補物質であることを示唆している。 以上の研究成果は、第58回日本応用動物昆虫学会大会(高知)で「脳内オクトパミン量の上昇がチクシトゲアリ女王の協力行動を減少させる」というタイトルで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロニー内の血縁構造の解析、多雌創設からどのように単女王制コロニーとなるのかについては今後の調査が必要であるが、協力から敵対へと行動を変える生理的メカニズムについては、生体アミンの1種であるオクトパミンが重要な役割を果たしていることが分かったので、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロニー内の血縁構造の解析、多雌創設からどのように単女王制コロニーとなるのかについて調査を進める。オクトパミン投与により行動を操作し、女王間の協力関係は互恵的なのか、うらぎりを人為的に引き起こすことにより、協力関係が崩壊するのか、囚人のジレンマモデルが成り立つかどうか、検証する実験を行う。また、オクトパミン投与により発現する遺伝子の解析についても実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬の譲渡があり、購入を予定していた試薬を購入しなくても済んだため。 次年度にコロニー内遺伝構造解析で購入を予定している試薬の補充にあてる。それにより解析するマイクロサテライト遺伝子座数を増やすことが可能となり、より精度の高い解析が可能となる。
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