2014 Fiscal Year Research-status Report
鱗翅目昆虫幼虫の摂食行動制御機構における味覚と生体アミン情報の役割と接点
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25450491
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
朝岡 潔 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究主幹 (80391580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 広人 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60450334)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 昆虫 / カイコ / 味覚 / 生体アミン / 受容体 / 摂食行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、カイコの摂食行動に影響を及ぼす生体アミンを調査する中で、ドーパミン(DA)とその受容体を介した細胞内シグナルが摂食制御に大きく関わっていることを明らかにしてきた。特に、D2-like DA受容体選択的アゴニストであるブロモクリプチン(Bro)をカイコ幼虫に注射すると強力な摂食亢進作用が現れることを見出した。そこで今年度は、D2-like DA受容体を介した摂食亢進と味覚との接点を明確にするために、広食性カイコ(あさぎりなど)を用いたショ糖飼料での詳細な行動実験を行った。その結果、Broは摂食刺激物質であるショ糖の味覚シグナルを中枢または末梢で制御することで、カイコの摂食量を向上させていることが行動レベルで明らかとなった。あさぎりに関しては、4齢期で飼育飼料が変わると、実験で用いるショ糖飼料の摂食量が低下し、その分Broの亢進作用が顕在化しやすくなることも見出した。以上のことから、カイコの体内には、系統の違いによる差異はあるものの、D2-like DA受容体を介したショ糖シグナルの調節とそれに伴う摂食制御機構が存在することが分かった。D2-like DA受容体として、これまでBmDopR3を我々はクローニングしていたが、別予算の研究で、新規D2-like DA受容体BmDopR4遺伝子の全長クローニングにも成功したことで、ショ糖シグナルの調節に関与するD2-like DA受容体の候補として、カイコには2種類のD2-like DA受容体BmDopR3とBmDopR4が関係している可能性が出てきたことは、昆虫生理学上、非常に興味深い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
広食性カイコを用いたショ糖飼料での行動実験は、予想以上の成果を得ることができた。しかし、代表者の所内異動により、味覚器官の切除による飲み込み行動の解析や電気生理学的な解析はほとんど進めることができなかった。カイコ口器感覚器官でのアミン受容体発現解析に関しても、微小な組織ゆえ、サンプリング条件の検討と実際の摘出に時間を要し、解析まで到達できなかった。別予算で進めていた新規カイコD2-like ドーパミン受容体BmDopR4の全長クローニングには成功し、本研究に有益な情報をもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、平成27年度まで継続される予定だったが、諸事情により今年度で中断となった。今後は、得られた成果を論文にまとめるとともに、特に大きな進展が見られたドーパミンシグナルと摂食・味覚との関係性について、さらに詳しく解析を進めていく。カイコ口器感覚器官における発現挙動解析についても、サンプリングまでは終わっているので、解析を進める。カイコから得られた生体アミンと味覚に関する知見を、農業害虫ハスモンヨトウへと展開するために、関連受容体のクローニングと同器官での発現解析も行うことを視野に入れて、科研費や他の外部資金の獲得を精力的に行う。
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Causes of Carryover |
代表者の所内異動により、予定していた行動解析や電気生理学的解析をほとんど進めることができなかった。そのため、昆虫飼育費や行動実験で使用する種々の消耗品費に加え、電気生理関連の実験装置のメンテナンス費が余ることとなり、残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は、平成27年度まで継続される予定だったが、諸事情により今年度で中断となった。残額はすべて返還した。
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