2013 Fiscal Year Research-status Report
猛禽類を指標とした生物多様性保全機能を高める水田利用の提案と検証
Project/Area Number |
25450506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
東 淳樹 岩手大学, 農学部, 講師 (10322968)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チュウヒ / サシバ / ノスリ / 水田の作付形態 / 生物多様性 / 環境利用 |
Research Abstract |
国内繁殖地、または繁殖数が減少傾向にあり絶滅が危惧されている猛禽類としてサシバとチュウヒを、また増加傾向にある猛禽類としてノスリをそれぞれ対象として、環境利用の違いを明らかにすることにより、保全上の課題を浮き彫りにできることを目的とした。 今年度はチュウヒのおもに探餌行動に着目し、定点調査によって環境利用を記録した。調査地として、水田地帯に休耕田(ヨシ原)が点在する青森県十三湖周辺の農耕地と、ほとんど休耕田がない秋田県八郎潟干拓地の農耕地を選定した。青森県十三湖周辺の農耕地では、水田のなかに点在するヨシ原を狩場として利用している記録を得ることができた。また、秋田県八郎潟干拓地の農耕地では、狩場として水田を忌避しており、いっぽうで、採草地、ヨシ原、排水路沿いの土手などを選好していることが示された。 また、選択的な狩り場環境は、ネズミの密度が高く、平均区画面積が大きく、営巣区画からの平均距離が短いことが示された。農耕地帯で繁殖するチュウヒの主食はネズミ類であることが知られている。したがって、ネズミの密度が高い農地が狩り場として選択的に利用されたのだろう。選択的な狩り場環境である牧草地やヨシ原は広大な四辺形の区画であり、幹線用水路や支線排水路は長く連続した帯状の区画である。飛びながら獲物を探索するチュウヒにとって、こうした形状の区画は広範囲の継続的な獲物の探索が可能であり、狩りの効率がよい場所と考えられる。そのため、平均区画面積が大きい農地は、選択的に利用されるのだと考えられる。営巣地の近隣に良好な狩り場があれば、営巣地と狩り場を往復するための飛行コストを縮減でき、効率よく給餌することが可能である。そのため、営巣区画からの距離が短い農地は、選択的に利用されるのだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チュウヒについては、水田の作付形態の違いと狩場としての環境利用の実態を野外での調査データを通して把握することができた。しかしながら、サシバ、ノスリについては、あまり芳しいデータを取得できなかった。その理由としては、今年から新たな調査地で研究をはじめたチュウヒについて、調査地点の設置や探餌行動の記録に想定よりも時間がかかってしまい、サシバとノスリの調査に十分な時間を確保できなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降に実施を予定しているGPS-TX送信機による行動追跡調査が、製品を作成している業者の都合(製品として販売を見合しているなど)で、実施が困難になる恐れが高い。送信機の装着なしでの目視による行動追跡は、サシバ、ノスリともかなり難しく、データの多くを欠損してしまう。そこで、行動追跡による環境利用ではなく、巣を中心とした想定行動圏内の土地利用と繁殖成績、ランダムポイントから想定行動圏のバッファ内の土地利用との比較において、水田の作付形態と環境利用との関係性を考察していくことを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
行動追跡のために購入を予定していたGPS-TX送信機や受信機等での調査を実施することが難しく、購入を延期したため、次年度に繰越することとなった。 製造元の都合等によりGPS-TX送信機や受信機等での調査を実施することが難しいため、巣内撮影用の小型カメラや上空からの土地利用等の撮影のためのマルチコプターなどのそれに代わる調査機器の購入を検討している。また、GIS解析を専門家に分析を依頼するための謝金、秋田県八郎潟干拓地でのチュウヒの行動調査協力者への旅費や謝金として使用を計画している。
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