2013 Fiscal Year Research-status Report
堰の織り成す農村景観の成り立ちの解明および未来へ継承する方策の研究
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25450509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
村上 修一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60283652)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化的景観 / 先人の知恵 / 農村景観 / 農業水利 / 河川景観 / 歴史的頭首工 |
Research Abstract |
近代以前に起源をもつ国内の主要事例として,土木史研究の知見にもとづき69水系153例の斜め堰を対象とし,俯瞰的な景観の特徴の解明と類型化を行った。地形図と航空写真をベースにCADによるトレースおよび計測を行い,対象事例の堰体と河道や隣接地形との関係性を分析した。分析の結果,蛇行形状の違いや山塊の有無によって,堰体,河道,隣接地形の関係性が9類型存在することがわかった。そのうち,蛇行の外側に取水点があり山塊が隣接する型式が全事例の3/4(90例)を占めたが,これらは土木史研究で示唆された伝統的河川取水システムに符号するものである。また,今後の研究課題として,現地で実際に眺望される景観の構成を詳細に調査分析する必要性が明らかとなった。 以上のような俯瞰的な景観の解析と並行し,小川江筋堰(夏井川水系),建部井堰(旭川水系),延野々大井手堰(四万十川水系),山田堰(筑後川水系)の取水点において景観の撮影を行い,写真の比較分析を試行した。結果として,堰体,河道,山塊が景観の基本的な構成要素であること,堰体の向きが河道や導水路の方向に沿っていること,取水岸は山塊の斜面となっており視界が閉ざされ対岸は平地となっており視界が開けていることが共通点として明らかとなった。また,俯瞰的な景観類型の異なる事例間で,山塊に嵌入する河道の可視性が異なることもわかった。この試行を現地での景観調査に応用する必要性を確認した。 一方,複数の水系から代表事例を抽出するという断片的な研究に対し,1水系の上流から河口までの本流と支流における堰景観の網羅という新たな課題が浮上した。その試行として,旭川水系を対象に現地踏査を行い,上流から河口までの本流と支流に存在する約900の堰の位置を確認し,GISを用いてマッピングしインベントリーデータを作成した。今後,地形や土地利用との関係について分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代以前に起源をもつ国内の主要な堰の景観について,地形図をもとに俯瞰的な解析を行い類型化することができたため,今年度の目標はおおむね達成した。ただし,景観の類型に土地利用の違いをどのように反映させるかが今後の課題として残っている。一方,次年度に実施するとしていた現地での景観調査を試行という形で先行できた。さらに,新たな研究課題として浮上した1水系における堰景観の網羅についても調査を完了することができた。したがって,土地利用の未検討という遅れがあるものの,次年度計画の前倒しや新たな課題に向けた調査の先行を考慮すれば,研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
河道や隣接地形との関係で俯瞰的に把握した景観類型別に,現地の眺望景観を撮影し,写真分析を行うことで,景観の基本構成や類型による違いを明らかにする。また,現地踏査により堰および堰に関わる景観要素のマッピング、簡易測量、写真記録を行い,景観要素のインデックスを作成,各要素の定性評価を行う。景観要素の分布状況や定性評価の結果にもとづき、景観要素の特徴と保全継承に関わる問題の所在を明確化させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に現地調査行のための旅費を要したが,残額5,919円を超過することが予想され,別財源で旅費を支出したため,結果として残額が次年度に繰り越される形となった。 当該残額については次年度の現地調査行のための旅費の一部として使用する。
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