2013 Fiscal Year Research-status Report
ニュータウンに内在する自然環境を継承・再編するランドスケープ計画モデルの構築
Project/Area Number |
25450511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
篠沢 健太 工学院大学, 建築学部, 准教授 (00278558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 俊作 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60209872)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ランドスケープデザイン / ニュータウン / 原地形 / 開発計画 |
Research Abstract |
研究の進度が異なる3つのニュータウン(以下NT)において、それぞれ調査研究を進めている。 千里NTについては、すでに研究代表者・分担者による一連の研究がある。2013年度はその成果に基づき、近年建替えが進む住区で駅勢圏からの距離などに配慮した建替えの事業フレームに基づき、より詳細な「内在する自然環境を継承・再編するランドスケープ計画モデル」案を検討した。千里津雲団地、新千里北町団地を事例に、開発時の地形造成と計画案への反映し、既存の樹木・緑地を保全し立地の特性を表す複数の計画案を、住戸や共用部分の建築設計も含めて模型製作し比較検討を進めている。なおこの模型製作の際に3Dプリンタを用いている。 港北NTについては、2013年度は計画された造成地形と原地形の詳細な比較、地形・地質・土壌など、土地の潜在的自然特性を調査した。港北NTの公園緑地系統「グリーンマトリックス」(以下GMS)では公園緑地と公共施設が歩行者専用道路等で有機的に結ばれているが、その一端をなす「せせらぎ水系」が原地形をどのように保全、改変して形作られたのか?その実態を明らかにし、新たな系統となりうるかを検討している。一方、NT周辺には現在、農業専用地区として保全された農地が広がり、当初これらの農地とNTを繋ぐ計画もあった。グリーンインフラGIの可能性の議論からこの関連を検討中である。 高蔵寺NTについては新たに研究を開始した。高蔵寺NTは、我が国のNT開発史において「初期」にあたる千里NTと、NT計画におけるオープンスペース系統計画の「結実期」である港北NTにいたる「中期」にあたる。NT開発計画と土地との関連も、単位空間である住区との関連から、交通・公園緑地系統との関連へと変化した。計画の変遷を追いつつ、その特徴を把握中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度は3年間の研究の初年度にあたり、研究計画全般の調整や機材の確保、技術の習得にやや時間がかかった。 調査や検討については、ほぼ当初の計画通りに進んでいる。ただし当初の計画ではそれらの成果のうち、いくつか(進捗状況のよいNTについて)研究成果を取りまとめて、学会等で発表する予定であった。しかし、初年度の研究環境の整備や研究データの整理・把握に手間取ったためそれまでに至っていない。またhpなど、成果の公表・公開についても現在十分にできていない。これについては2014年度以降に随時成果を発表・公表していく予定である。 一方で、本研究の初年度に、計画全体の方向性について議論する機会を得ることができた。(1)日本建築学会都市計画委員会地域文脈デザイン小委員会、(2)港北NT研究会、(3)登録ランドスケープアーキテクト(以下RLA)有志による研究会である。(1)日本建築学会地域文脈デザイン小委員会では、下記今後の推進方策に述べた検討を進めている。(2)港北NT研究会においては、口頭発表等を行ってきた。また(3)RLA有志による研究会では、NT開発とランドスケープデザインに関するブレインストーミングを行いつつ、本研究の論理的骨格の構築を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究計画に則り、3つのNTについて研究を進めていく。千里NTについては今年度中に詳細デザインについて検討し、課題・修正点を検討する。港北NTについては、GMSとその基盤となった自然環境の構造を、特にせせらぎ水系とかつての谷地形との差異、雨水排水幹線などから明らかにし、どのような計画思想の元で開発が行われたかを明確にする。高蔵寺NTについては、他のNTと同様、その基礎的な自然環境の情報とNT計画における改変の過程を追いつつ、1センターの考え方や尾根と谷を用いた歩車分離がNTにどのように形作られ、結果としてNTの公園緑地にどのような特徴が見いだせるのかを明らかにする。今後、初年度に導入したGISソフトや3Dプリンタに関する技術を向上させつつ、効率的に運用し、成果を上げていきたい。 その上で、日本のNT開発におけるランドスケープ計画を、2つの視点から年代を通じて把握したい。1つは「地域文脈」の視点からNTの特徴を編年する作業である。これは、NT開発に際して対象地域をどう把握し、計画に反映させてきたかを広範に眺めるもので、日本建築学会都市計画部会地域文脈デザイン小委員会における検討として進める。(高度経済成長期に盛んとなった地域文脈研究を「第2の波」、現代を「第3の波」として考えている。今年度発表したものはこの議論に当たる)。もう1つは、ランドスケープデザインを捉える切り口として、高度経済成長時代にランドスケープアーキテクト上野泰氏により論考された「3つの床」の再認識である。千里NT、泉北NT、多摩NTの開発に関わった氏が提案したこの議論ではランドスケープデザインは大地(第1の床)と建築物(第3の床)を繋ぐ「第2の床」として構想されているが、これは現代のNT建替えの際にも多くの示唆を与えてくれる。これについてはランドスケープの実務に関わるRLAのメンバと研究を続けている。
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Research Products
(1 results)