2014 Fiscal Year Research-status Report
テロメアの異常が微小管阻害剤感受性を高める機構とその応用
Project/Area Number |
25450517
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上野 勝 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (90293597)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | テロメア / 組換え / 分裂酵母 / rDNA / スピンドルチェックポイント / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母のPot1はテロメアに結合する蛋白質である。分裂酵母のRqh1はDNA組換えに関係するヘリケースである。我々は分裂酵母pot1破壊とRqh1のヘリケース活性を持たない点変異(rqh1-hd)を組み合わせた二重変異株(pot1 rqh1-hd株)では、テロメアが組換えで維持されること、テロメア間で組換え中間体を持ったまま染色体分配が進行し、微小管阻害剤に対して高い感受性を示すことなどを報告している(Mol.Cell.Biol.2011)。
昨年度は、pot1 rqh1-hd株は、スピンドルチェックポイント(SAC)が活性化されることや、chk1の破壊がテロメアでの組換え中間体の蓄積を抑圧することを発見した(Mol.Cell.Biol.2014)。
本年度は、chk1の下流因子の破壊がpot1 rqh1-hd株のテロメアでの組換え中間体の蓄積を抑圧する機構を解明した(論文投稿中)。さらにテロメア以外での組換え中間体の蓄積がSACを活性化する機構の解明を行うためのスクリーニング系の構築と候補変異株の取得に成功した(論文準備中)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、主に以下の2つである。 (1) chk1の破壊がどのような機構でpot1 rqh1-hd株のテロメアでの組換え中間体の蓄積を抑圧するのかを明らかにする。 (2) テロメア以外の場所で組換え中間体が蓄積したときにSAC(スピンドルチェックポイント)が活性化される機構の解析。 (1)に関しては、Chk1の下流で働くWee1とその下流で働くCdc2がG2期からM期への移行を停止することで、G2期が長くなることがテロメアでの組換え中間体の蓄積を促進することを明らかにした(論文投稿中)。 (2)に関しては、昨年度はrqh1-hd変異株をHUという薬剤でDNA複製を停止させ、その後DNA複製を再開させるとReb1依存的にSACが活性化することを報告している(Mol.Cell.Biol.2014)。Reb1はrDNAで一方の複製フォークを停止する。これらのことから、rDNAでの複製中間体の蓄積がSAC を活性化すると考えている。本年度は、rDNAでの複製中間体の蓄積がSAC を活性化する機構の解明を目指して、SAC 活性化に影響を及ばす変異株などの探索を試みた。まず、pot1 rqh1-hd株が微小管阻害剤に感受性になるのと同様に、rqh1-hd変異株でのrDNAにおける複製中間体の蓄積が微小管阻害剤感受性を増大させるかどうかを調べた。その結果、rqh1-hd株はHUを含む培地で微小管阻害の感受性が高くなり、reb1を破壊すると微小管阻害の感受性が和らぐことを発見した。この発見を利用してrqh1-hd株に薬剤で変異を導入することでHUを含む培地で微小管阻害の感受性が抑圧される株のスクリーニングを行い、複数の株を取得することに成功した。これらの株では、rDNAでの複製中間体の蓄積や、それによるSACの活性化に関与する遺伝子変異株が含まれていることが期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)テロメア以外の場所で組換え中間体が蓄積したときにSAC(スピンドルチェックポイント)が活性化される機構の解析。 来年度は、本年度取得したrqh1-hd株に薬剤で変異を導入することでHUを含む培地で微小管阻害の感受性が抑圧される変異株の変異遺伝子を同定する。また、この微小管阻害剤にDNA複製チェックポイントが影響を与えるかどうかを調べる。さらに、rqh1-hd変異株をHUでDNA複製を停止させ、その後DNA複製を再開させることでできると考えているrDNAでの複製中間体の蓄積を生細胞で観察することを試みる。 (2)分裂酵母において、テロメアで組換え中間体が蓄積したときに微小管阻害剤感受性が高まる機構の解析。 pot1 rqh1-hd株の微小管阻害剤感受性に影響を与える変異株を取得し、それらが微小管阻害剤感受性に影響を与える原因を解析する。 (3)テロメアが組換えで維持されているがん細胞について、そのテロメアでの組換えを阻害したときに、微小管阻害剤の感受性が高まるかどうかの解明。 テロメアが組換えで維持されているがん細胞について、DNA組換えに関与する分裂酵母のヘリケースRqh1のホモログや、その他のテロメアの組換えによる維持やDNA組換え一般に関係する様々な遺伝子のsiRNAでのノックダウンや、阻害剤によって阻害したときに、微小管阻害剤の感受性が高まるかどうかを調べる。siRNAでノックダウンしたときに微小管阻害剤の感受性を高める遺伝子が見つかれば、次にその原因が、テロメア間での組換え中間体の蓄積によるものかどうかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
本年度は、得られた変異株の変異箇所の同定のために、業者に委託し、次世代シークエンサーを用いる予定だった(この費用約100万円)。しかし、学内の共通施設で格安でシークエンスを行うことができたため、約30万円しかかからなかったため、約70万円が未使用となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、ヒト培養細胞を用いた実験を行うが、そのときに使用するクリーンベンチ(約45万円)を購入する。さらにヒト培養細胞実験を行うのに必要な、培地や抗生物質、プラスチック製品などを購入する(約25万円)。また、分裂酵母Rqh1のヒトホモログの以下の阻害剤が購入可能となったため、BLM阻害剤やWRN阻害剤を購入する(約5万円)。
|
Research Products
(4 results)