2014 Fiscal Year Research-status Report
デュアル抵抗性蛋白質をコアとする防御シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
25450523
|
Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
鳴坂 真理 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 研究員 (80376847)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 生物間相互作用 / 抵抗性蛋白質 / 炭疽病菌 / シロイヌナズナ / 病害抵抗性 / 免疫沈降 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原体の攻撃を受けた植物は、抵抗性蛋白質により病原体を認識し、抵抗反応を起動する。この防御応答反応を解明し、本知見を活用することで、病害抵抗性作物創出に向けた分子基盤技術を構築するため、以下の研究を遂行した。 ①抵抗性蛋白質RRS1への部位特異的変異の導入によるRRS1の機能解明 : 前年度に引き続きRRS1を構成するモチーフ、ドメインを解析した結果、RRS1にはRPS4と同配列のWalker型ヌクレオチド結合蛋白質に共通して存在するモチーフGxxxxGKT (P-loop)が存在した。そこで、GKTの3アミノ酸をAに置換したP-loop欠損型RRS1をrrs1-1(RRS1欠損変異体)へ導入し、2種の病原体(アブラナ科野菜類炭疽病菌および斑葉細菌病菌)に対する病害感受度検定を行った結果、本形質転換体はこれら病原体に対して耐性を獲得できなかった。これによりRRS1がRPS4と協調して抵抗反応を起動するには、P-loopドメインにおけるヌクレオチドの結合が重要であることが示唆された。 ②生化学的手法によるデュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子の検索 : 前年度に引き続き“デュアル抵抗性蛋白質システム”を構成する2つの抵抗性蛋白質と相互作用する因子を同定し、デュアル抵抗性蛋白質システムを構成する蛋白質複合体の全貌を明らかにすることを試みた。前年度に構築したタグ融合抵抗性蛋白質(Myc-RRS1およびFlag-RPS4)を用いた免疫沈降法により、両蛋白質が相互作用することが明らかとなった。そこで、①で明らかとなったP-loopドメインを中心に、変異もしくは断片化したタグ融合RRS1とRPS4蛋白質を構築した。 ③サプレッサー変異体の解析 : 前年度に引き続き、原因遺伝子の特定をめざし、戻し交雑を行っている。また、新たなサプレッサー変異体の取得を試みたが、常時抵抗反応が誘導される矮化個体となり、次世代の取得には至らなかった。検定個体数を増やし、新たなサプレッサー変異体の取得を試みる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、デュアル抵抗性蛋白質システムを構成するRRS1が、RPS4と相互作用し、病原体に対する抵抗性を誘導することが明らかとなった。一方で、サプレッサー変異体を用いて、デュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子を同定するには至っていないため、マイクロアレイ解析などの遺伝子発現解析を中心に、デュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子の推定を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も概ね計画通りに研究を推進できたため、得られた結果をもとに、デュアル抵抗性蛋白質の機能解明を行う予定である。 ①抵抗性蛋白質RRS1への部位特異的変異の導入によるRRS1の機能解明:前年度の知見をもとに、免疫沈降法を用いて、変異RRS1とRPS4との相互作用を解析することで、RRS1とRPS4との制御機構を推定する。 ②生化学的手法によるデュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子の検索:①によるRRS1とRPS4の免疫沈降により、相互作用する因子の推定を行う。さらに、遺伝子サイレンシングにより、デュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子の同定を行うため、その系の構築を行う。 ③サプレッサー変異体の解析:前年度に引き続き、原因遺伝子の特定をめざすとともに、新たなサプレッサー変異体の集積を行う。 ④病害抵抗性作物の分子育種の基盤技術の構築:デュアル抵抗性蛋白質を導入した耐病性コマツナ、ナタネについて、その病害耐性の付与効果を検討する。まず、世代を経た個体について、耐病性が維持されるのか、また、されない場合は原因の推定を行う。また、①~③の研究成果により推定されるデュアル抵抗性蛋白質と相互作用する因子の取得を試みる。
|
Causes of Carryover |
予定していた物品の納品が遅延したため、その費用を確保した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
RRS1の機能解析には、アミノ酸置換を用いた解析が必要となる。そのため、変異を導入したRRS1作製に必要な試薬代などに充てる。
|
Research Products
(10 results)
-
-
[Presentation] 炭疽病菌の比較ゲノム解析とその利用2015
Author(s)
Pamela Gan, 鳴坂真理, 熊倉直祐, 津島綾子,中田菜々子, 久保康之, 高野義孝, 鳴坂義弘, 白須賢
Organizer
平成27年度日本植物病理学会大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2015-03-29 – 2015-03-31
-
-
-
-
-
-
-
-