2013 Fiscal Year Research-status Report
新規複素環構築法創出を指向する触媒的炭素-水素結合活性化に関する研究
Project/Area Number |
25460002
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲本 浄文 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30359533)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 炭素-水素結合官能基化 / ルテニウム / 一酸化炭素 / ジベンゾピラノン環 |
Research Abstract |
炭素-水素結合 (C-H) の触媒的活性化(切断)と続く官能基化,いわゆる「触媒的 C-H 官能基化」は,アトムエコノミーかつステップエコノミーな有機合成を実現できる有用な手法の 1 つである.申請者はこれまで,パラジウム触媒を用いた C-H 官能基化と続く分子内炭素-ヘテロ原子(窒素,硫黄)結合形成プロセス(C-H 閉環)による複素環構築法の開発に注力し,成果を挙げてきた.今回,この C-H 閉環プロセスにおいて,C1 ユニットとして有用である一酸化炭素 (CO) の挿入反応を組み込むことを計画した.検討の結果,2-アリールフェノール類に対する CO 挿入型の C-H 閉環反応を行うことで,種々の生理活性化合物中に広く存在するジベンゾピラノン骨格が収率よく合成できることが明らかとなった.パラジウムやロジウムを含む様々な遷移金属触媒を検討したところ,本反応ではルテニウム触媒を用いた際に,最も良い収率で生成物が得られることが判明した.カルベン型リガンドおよび触媒量のピバル酸の添加が,円滑な反応の進行に必須であった.本条件を用いることで,常圧の CO 雰囲気下に閉環反応が進行する.官能基共存性も高く,シアノ基やアルコキシカルボニル基,アセチル基に加え,臭素や塩素,フッ素といったハロゲン原子もベンゼン環上の置換基として許容であった.重水素化体を用いた反応機構の解析も行い,C-H 結合へのルテニウム金属のメタレーションが,反応系中で可逆的に怒っていることが示唆された.非常に実用的な,新規ジベンゾピラノン骨格構築法を確立できた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項で記載したように,当初応用的研究として位置づけていた「小分子気体の固定化」として CO 挿入型の C-H 閉環プロセスを確立した一方,二酸化炭素 (CO2) 固定化や反応の位置選択性制御,タンデム型反応への適用といった他の応用的課題はいまだ充分な検討が成されていない.今後さらに継続した基礎的及び応用的研究が必要である.
|
Strategy for Future Research Activity |
基礎的検討として,さらに広範な基質を用いた C-H 閉環反応を行うことで,本プロセスの適用範囲を明らかにする.これまで実現していない炭素-酸素結合 (C-O) 形成を利用した,ベンズイソキサゾール,ベンズオキサゾール,ベンゾフラン化合物といった含酸素複素環合成を重点的に検討する.さらに応用的研究として,前述の CO2 固定化や位置選択性の精密制御,タンデム型ワンポットプロセスへの適用をさらに推し進め,多様な新規分子変換プロセスの開発を目指す.
|