2014 Fiscal Year Research-status Report
短いペプチドオリゴマーを用いた、水中での強固な規則構造の構築と制御
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25460009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾谷 優子 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60451853)
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Project Period (FY) |
2013-02-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘリックス / 人工アミノ酸 / 有機合成化学 / 分子動力学計算 / アミド結合 / シス-トランス異性化 / NMR解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに、以下の成果を得ている。 (1)堅牢なトランスアミド体ヘリックス構造の創製:橋頭位の片側に置換基を導入した二環性β-アミノ酸(β-プロリン誘導体)をデザイン、合成し、2量体から8量体までのオリゴマーを合成した。X線結晶構造解析および溶液中のNMR解析の結果、橋頭位置換基の立体効果により全てのアミド結合がトランス体に偏ったヘリックス構造を創製した。天然に存在するα-プロリンペプチドは、シスアミドからなるヘリックス(polyproline I)とトランスアミドからなるヘリックス(polyproline II)が溶媒によって変換するが、本研究で得られた構造は溶媒や温度にかかわらず安定であった。 (2)閉環メタセシス反応を用いたシスアミド体ヘリックスの詳細構造の決定:シスアミド体のみを取る二環性β-アミノ酸の2量体モデル化合物について、隣接残基の側鎖同士を閉環メタセシス反応により架橋したところ、シスアミド体からトランスアミド体への変換が起こり、そのシス/トランス比やアミド結合の回転速度は架橋側鎖の長さに依存して変化することが分かった。 (3)二環性オリゴマーの鎖長依存的な構造誘起の計算化学的解明:橋頭位に置換基を持たない二環性オリゴマーは、アミドのシス-トランス平衡混合物で存在する。規則構造化の可能性について調査するため、2量体から8量体までのMDシミュレーションを行ったところ、オリゴマーが長くなるにつれてトランスアミド体を多く含むコンホマーの存在比が高くなる傾向が示唆された。 (4)二環性β-プロリンミミックを用いてタンパク質-タンパク質相互作用を制御する化合物を創製し、タンパク質-タンパク質相互作用の阻害活性を評価したところ、活性のある化合物が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)2つある橋頭位(1位、4位)のうち1位に置換基を入れるとトランスアミド体をとり、4位に置換基を入れるとシスアミド体を取ることが分かり、両者はそれぞれ異なるヘリックス構造をとることが示唆された。これらの結果により、二環性β-アミノ酸のアミド平衡の効果的な固定法が確立された。橋頭位の置換基を分子内水素結合可能なアルコールに変化させた二環性オリゴマーも合成した結果、トランスアミド体をとることに変わりはないことを見出した。一方で、主鎖の構造が従来のオリゴマーと少し異なることが分かった。種々のスペクトル的手法を用いてこの構造変化を調査する予定である。 (2)シスアミド体が安定であるβ-アミノ酸の2量体モデルにおいて、側鎖同士を架橋することにより、トランスアミド体へと変換が起こるという興味深い現象が見出された。そこで、この現象についての理解を深めるために種々の長さの架橋側鎖を持つ分子を合成し、アミドのシス/トランス比や回転速度に関する知見を得た。従来の目的の一つであった、架橋により長鎖のオリゴマーのヘリックス構造を安定化し詳細構造を解明することについては、2量体の研究がまとまり次第開始したい。 (3)おおむね当初の予定を達成した。計算との比較に必要な実験データをそろえ、計算手法も確立した。しかしながら、分子動力学計算のパラメータ設定法について改善の余地があることが判明した。 (4)β-アミノ酸オリゴマーについてタンパク質-タンパク質相互作用活性を調べたところ、弱い活性があることが分かった。今後は活性増強に向けて、置換基の変換や天然アミノ酸の導入を検討して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)分子内水素結合を導入したトランスアミドオリゴマーの詳細構造について考察予定である。また、トランスアミドを誘起する本アミノ酸を天然のα-アミノ酸と結合させた場合も、トランスアミドへの固定化と規則構造誘起が起こるか調査し、ヘリックスミミックとしての応用につなげたい。 (2)現在までに、温度可変動的NMRの手法を用いてアミド平衡の異性化速度が架橋側鎖の長さに依存するかについて初期の知見を得たが、今年度は全ての化合物についてアミドの異性化障壁(活性化自由エネルギー)を求め、定量的な評価を行いたい。 (3)論文化を視野に、種々の計算化学的検討を行いたい。具体的には、今まで既存の力場パラメータを用いていたが、分子軌道計算により再設定したパラメータを用いて分子動力学計算を行い、結果を比較したい。 (4)二環性β-プロリンミミックを用いてタンパク質-タンパク質相互作用を制御する化合物を創製する。橋頭位の置換基およびN末、C末に天然のアミノ酸を導入した短いペプチドオリゴマーを合成し、タンパク質-タンパク質相互作用の阻害活性を評価する。二環性β-アミノ酸以外の人工アミノ酸も用いて活性の向上を検討する。また、合成したペプチドの酵素消化などに対する化学的安定性や、構造の調査を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Lysophosphatidylserine analogues differentially activate three LysoPS receptors2014
Author(s)
Akiharu Uwamizu, Asuka Inoue, Kensuke Suzuki, Michiyo Okudaira, Akira Shuto, Yuji Shinjo, Jun Ishiguro, Kumiko Makide, Masaya Ikubo, Sho Nakamura, Sejin Jung, Misa Sayama, Yuko Otani, Tomohiko Ohwada, and Junken Aoki
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Journal Title
Journal of Biochemistry
Volume: 1
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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