2015 Fiscal Year Research-status Report
ハロアミンの転移反応利用する含窒素化合物の新規合成
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25460014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村井 健一 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70532068)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 複素環化学 / ハロアミン / 転位反応 / 酸化反応 / アミナール |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、窒素原子にハロゲンが結合した「ハロアミン」について、その求電子的窒素原子の特徴を利用した反応を検討し、分子内の転移反応を中心に反応開発を展開し、含窒素化合物の新規合成法の開発を目指すものである。 本年度は、平成26年度に引き続き2-フェニルエタンアミンとシクロブタノン類から容易に合成できるテトラヒドロイソキノリン誘導体の酸化的転位反応について検討した。すでに、N‐クロロスクシンイミドを用いる窒素原子のハロゲン化(ハロアミンの形成)、転位によるイミニウム中間体の生成、水素化ホウ素ナトリウム、または炭素求核剤の導入がワンポットで連続して進行し対応する多環式テトラヒドロイソキノリン誘導体が一挙に得られることを見出している。本年度の検討で、本反応の一般性を拡張させることに成功した。すなわち、昨年度の検討では、基質は電子豊富芳香環を有する基質(ヘテロ原子置換体)に限定されていたが、本年度更にヘテロ原子を持たない基質への適用にも成功し、本転位反応の一般性の高さを明らかとした。また、トリフルオロエタノール溶媒を用いるハロアミンの新規活性化法を適用することで、歪みの大きいシクロブタノン以外のシクロアルカノンにも適用できることを見出し一般性の高いテトラヒドロイソキノリン化合物の合成法として確立した。開発した反応の有用性は、天然物crispine A及びその誘導体の簡便合成にも適用し実証した。これらの、成果はOrganic Letters誌にて発表した。 また本酸化的転位反応をインドール基質へも展開し、インドールの窒素上の保護基を適切に選択することで、同様の転位反応が進行することを見出した。得られる生成物の骨格は生物活性天然物によく見られる構造であり、今後反応を精査することで、それらの新規合成法とへ展開できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究実施計画として、(1)ヘテロ原子が置換した基質での検討、(2)電子豊富な芳香環が置換した基質での検討、(3)フルオラスアルコールを利用するハロアミンの新規活性化に取り組んでいる。まず(1)のヘテロ原子が置換した基質での検討について、N,O-アセタールの転位反応ついて検討し、置換ピロリドンの新規合成法を開発した(論文発表済み)。また、(2)電子豊富な芳香環が置換した基質での検討についても研究を実施し、テトラヒドロイソキノリン誘導体の新規合成法の開発に成功した(27年度に論文発表)。(3)フルオラスアルコールを利用するハロアミンの新規活性化についても、テトラヒドロイソキノリンの転位反応の開発過程においてその活性化法としての有用性を実証した。当初の計画の一部である分子間反応への応用は今後の課題である。 当初計画の1,2、および3の項目について一定の成果を挙げることができているので、達成度としてはおおむね良好と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大きな変更はないので研究計画に従い検討する。 これまでの検討で、本研究課題であるハロアミンを利用する酸化的転位反応が電子豊富な芳香環以外でも転位反応が進行し、当初の予想以上の高い一般性を有することを見出しつつある。昨年度までに引き続き、ベンゼン環の置換基効果、複素環の種類など基質の適用範囲を詳細に検討し、ハロアミンを利用する転位反応前駆体となる基質の設計指針を提示する。
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Causes of Carryover |
27年度に電子豊富な芳香環が置換した基質でのハロアミンの転位反応について検討し、テトラヒドロイソキノリン新規構築法として、速報にて研究成果を発表した。本研究過程において、当初の予想に反して電子豊富な芳香環以外でも転位反応が進行し高い一般性を有することを見出した。本申請研究では、ハロアミンを利用する転位反応前駆体となる基質の設計指針を示すことを目的としており、事業を延長し詳細に検討し、より明確な指針を提示するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基質の設計指針を示すために、実際に種々の基質を合成し、反応を検討する必要がある。次年度の予算は、その基質合成のための試薬代に充てる予定である。
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