2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 和範 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (40403696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハロゲン / 脱離能 / 超原子価 / ジアゾニウム / キセノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究である、三価の超原子価ジアリールクロラン、シクロヘキセニルブロマンの合成は既に2013年度に首尾よく成功している。そこで、今年度はそれらの熱分解反応の反応速度測定を実施し、その反応速度は求核試剤(トリフラート)の濃度に依存しない単分子分解反応であることを見出した。速度定数の温度依存性から得られた活性化エントロピーは、正の値をとり、これらの結果から単分子分解機構が示唆された。 また、アリールキセノン化合物の合成にも成功し、今後その分解反応に着手する予定である。同じ反応機構で分解するジアゾニウム塩も、同様の条件で分解速度を測定した。活性化パラメーターを用いて比較した、同じ温度での反応速度は三価の塩素置換基よりも、窒素分子が脱離しやすいことを示していた。また、更に計算化学的アプローチによって、ジアリールブロマン、クロランのそれぞれ反応の活性化エネルギーを予測することができた。いずれも良く実験結果を再現しており、詳細な軌道間相互作用も解析することもできた。遷移状態の構造は、ジアゾニウム塩と類似した、SN1-SN2境界機構のものであり、予期したとおり速度測定結果から脱離能を同じ評価軸で比較しても良いことが示唆された。 次年度の目標としては、当初の計画通り臭素、塩素、窒素、そして今回合成できたキセノン誘導体のそれぞれ元素に由来する脱離能の違いを評価し、その理由を明確にしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先の研究実績の概要にもあるように、これまで不明であった臭素、塩素、そして窒素置換基の脱離能の違いを明確にしつつある。計算化学的アプローチも首尾よく進展している。キセノン誘導体の合成にも成功しており、当初の計画に照らしても、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
超原子価ハロゲン同士の反応特性の違いの原因が明らかになりつつある。また、ジアゾニウムとの比較により合成化学的にも面白い知見が得られてきた。すなわち、窒素は導入できる官能基が限られているが、これまでの研究から超原子価ハロゲンは多彩な官能基へ導入可能であり、その卓越した脱離能を鍵として様々な異常電子状態の活性種を発生できる可能性が大いに期待できる。今後さらに、キセノン脱離基の性質を明らかにすることにより、更に高反応性の反応剤・反応の開発に応用することを期待している。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、UV-VIS測定に用いる予定であった低温セルユニットが既存のもので代替できることが分かり、不要となった。また、今年度は高価な試薬を購入することが無く、必要な化合物は、既存の試薬の組み合わせで十分合成することが可能であった。 なお、今年度開催された国際会議は、国内であり旅費はほとんど掛からなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は不安定化合物の取扱いに基づく、特殊実験器具の購入が想定される。また、UV-VIS測定用高純度溶媒や前駆体試薬の購入が必要となることが予想される。また、12月に開催される、国際会議への出席にもある程度の旅費の出費を想定している。
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