2014 Fiscal Year Research-status Report
水の特性を利用した (η3-ベンジル)パラジウムの新規炭素-水素結合活性化反応
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25460026
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
氷川 英正 東邦大学, 薬学部, 講師 (20550619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パラジウム / 水 / ベンジルアルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、π-ベンジルPd錯体を用いたメルカプト安息香酸のS-ベンジル化反応を見出した。4-メルカプト安息香酸、Pd2(dba)3触媒、及びベンジルアルコールを水中で120 ℃、16時間加熱したところ、S-ベンジル体を収率80%で与えた。一方、ベンゼンチオールを用いた場合、触媒毒となり反応は全く進行しなかった。Hammett studyの結果から、遷移状態におけるカチオン中間体の形成が明らかとなった。メルカプト安息香酸-Pd(0)錯体に、水和によって活性化されたベンジルアルコールが酸化的付加し、π-ベンジルPd(II)カチオン中間体を経由して進行すると考えられる。次に、アントラニル酸ならびにアニリン類に対してπ-ベンジルPd錯体を作用させると、N-ベンジル化/ベンジル位C-Hベンジル化連続反応が進行することを見出した。モノ-π-ベンジルPd錯体は求電子性を有するため、求核剤であるアミノ基に対してN-ベンジル化反応が進行するが、中間体として形成するビス-ベンジルPd錯体は分子内で求核的なベンジル化反応を起こす。有機溶媒中では反応が進行しないことから、水を溶媒としたときにのみ起こる特徴的な反応である。これまでに、ベンジルアルコールを用いたπ-ベンジルPdを経由した反応例はほとんど知られていない。ベンジル位の反応においてKIE=4.6が観測されることから、C-H結合の切断が律速段階の1つであると考えられる。重水中Pd触媒存在下、ベンジル位がD化されることからC-H結合の切断が起こることがわかる。アニリンのHammett studyを行ったところ、ρは負の値であることから、遷移状態におけるカチオン中間体の形成が示唆された。N-ベンジルアニリンの代わりにイミンを基質として用いた場合は反応が進行しない。以上のことから、本反応の機構はイミン類への炭素ラジカル付加反応ではないと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水を溶媒とすることによりベンジルアルコールのヒドロキシ基を活性化し、生じたベンジルパラジウム錯体を経由する新しいベンジル化反応を達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、水溶性Pd触媒を用いたベンジルアルコールをベンジル化剤とする直接的ベンジル化反応の適応拡大を行う。また、π-ベンジルパラジウム錯体のC-H結合活性化能を活用した連続的分子変換法の開発を行う。
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