2013 Fiscal Year Research-status Report
新規の応答機構によるインスリン放出ナノカプセルの開発
Project/Area Number |
25460031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 勝彦 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80400266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェニルボロン酸 / 過酸化水素 / 交互累積膜 / 機能性薄膜 / マイクロカプセル / グルコース |
Research Abstract |
本研究では、フェニルボロン酸(PBA)およびそのエステルがH2O2によってフェノールに酸化(分解)される反応を利用して、グルコース濃度が200 mg/dL程度で自発的にインスリンを放出する薄膜を検討し、この薄膜で微粒子およびナノカプセルを作製すことを目的に研究を行った。 ①H2O2応答による交互累積膜からの色素放出。 はじめに、放出モデル化合物として3-(Dansylamino)phenylboronic acid(DPBA)を用いPBAの吸着特性およびH2O2の応答性を検討した。ジオール構造としてシキミ酸を含む交互累積膜を調製し、DPBAをボロン酸エステル結合により吸着後、H2O2添加による放出挙動を調査した。その結果、DPBAの吸着はpH、濃度、膜厚によりコントロール可能であり、DPBAの放出はH2O2の濃度に依存し、0.1 mMと0.5 mMの過酸化水素の応答して65% and 93%が30分で放出した。また、放出メカニズムがH2O2によるボロン酸エステルの切断であることを明らかにした。 ②H2O2によって分解する交互累積膜の調製。PBAをペンダントしたポリアリルアミン(PBA-PAH)と種々のジオール構造をもつ高分子を検討したところ、ポリビニルアルコール(PVA)を用いることで良好な累積膜の形成を確認した。これらの累積膜の物性を水晶振動子ミクロバランス法、紫外可視分光法、原子間力顕微鏡によって調査した。また、(PBA-PAH/PVA)n累積膜をH2O2溶液に浸漬すること濃度依存的に崩壊することを確認した。①と同様に膜形成の駆動力であるボロン酸エステル結合がH2O2によって分解するためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェニルボロン酸(PBA)およびそのボロン酸エステルがH2O2によってフェノールに酸化され分解される機構を利用して、H2O2刺激により「低分子化合物が放出される」および「分解応答」をしめす交互累積膜を開発することができた。また、これらの応答メカニズムを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られたH2O2応答交互累積膜にグルコース酸化酵素を固定化する。グルコースオキシダーゼはグルコースを代謝しH2O2を生成する。このため、これらの累積膜はグルコースに応答することが期待できる。グルコース酸化酵素の固定化量や累積膜の位置などは交互累積膜法を用いることで容易に調製可能であるのでこれらの最適な条件を検討する。 次に、これらの累積膜を微粒子に被覆する、もしくは薄膜被覆後に微粒子を溶解除去することで様々な構造のナノカプセルを調製する。微粒子には、ポリ乳酸ビーズや炭酸カルシウム粒子などを使用する。調整条件や微粒子やナノカプセル内でのインスリンの分布についての評価も行う。製剤としての保存特性を明らかにするために、作製したナノカプセルを凍結乾燥して保存することができるかどうか検討する。凍結乾燥前後のナノカプセルの形状やサイズの変化なども明らかにする。これらの評価には、走査電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、ゼータ電位計、電気化学測定装置、各種分光計を使用する。 生理的条件において水溶液中に分散したナノカプセルからのインスリンの放出挙動を詳細に評価する。溶液中のグルコース濃度を変化させて、インスリンが放出される挙動をHPLCにより調査する。本研究ではカプセルの作製に、酸やアルカリ、有機溶剤、高温、などの条件を採用していないので、ナノカプセルから放出後もインスリンは高次構造及び生物活性を保持していると思われる。放出されたインスリンの立体構造を円偏光二色性(CD)及び赤外(IR)スペクトルにより解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していたグルコース酸化酵素などの試薬消耗品の購入を学会発表などのスケジュールの都合で次年度に延期することによって生じたものであり、必要な経費として平成26年度請求額とあわせて使用する予定である。 使用計画として、26年度の研究に必要な酵素、試薬および消耗品を年度初めに購入する。
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