2014 Fiscal Year Research-status Report
新規の応答機構によるインスリン放出ナノカプセルの開発
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25460031
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 勝彦 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80400266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノカプセル / 交互累積膜 / インスリン / フェニルボロン酸 / ドラックデリバリーシステム / カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フェニルボロン酸(PBA)がH2O2によって分解する反応と酵素反応を組み合わせることで、生理条件下において200mg/mL程度のグルコースに応答して速やかにインスリンを放出する交互累積膜を調製すること、この薄膜で微粒子を被覆もしくはナノカプセルを作製し、血糖値の上昇に応じて自発的にインスリンを放出する人工膵臓用材料へと発展させることを目的に研究を行った。 はじめに、H2O2の応答性をモデル色素(3-(Dansylamino)phenylboronic acid, DPBA)を用いて検討した。DPBAは、ポリビニルアルコールを用いて作成したジオール構造を含む交互累積膜にボロン酸エステル結合によって特異的に吸着し、H2O2添加により放出された。この応答は生理条件下においても鋭敏に進行した。また、放出機構はH2O2によるC-B結合の切断であることを確かめた。同様に、この機構によりH2O2によって分解する交互累積膜を作製し検討を行った。 次に、酵素反応を組み合わせたインスリン放出薄膜について検討を行った。グルコース酸化酵素を上記の累積膜と組み合わせグルコース応答性を調査した。グルコース酸化酵素はグルコースを代謝しH2O2を生成する酵素である。その結果、生理条件下において1 mM程度のグルコースによりほぼ完全に分解する交互累積膜の作製に成功した。今後、グルコース酵素の固定化量や薄膜中の位置などは交互累積膜法を用いることで容易に調製可能であるのでこれらの最適な条件を検討しナノカプセルを作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェニルボロン酸を用いてH2O2に応答する交互累積膜の作製に成功した。また、酵素反応を組み合わせることで生理条件下でグルコースに応答することが確認できた。またこれらの応答機構を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果をもとに、交互累積膜法により微粒子にグルコース応答膜を被覆する、もしくは薄膜被覆後に微粒子を溶解除去することで様々な構造のナノカプセルを調製する。微粒子には、ポリ乳酸ビーズや炭酸カルシウム粒子などを使用する。調整条件や微粒子やナノカプセル内でのインスリンの分布についての評価も行う。製剤としての保存特性を明らかにするために、作製したナノカプセルを凍結乾燥して保存することができるかどうか検討する。凍結乾燥前後のナノカプセルの形状やサイズの変化なども明らかにする。これらの評価には、走査電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、ゼータ電位計、電気化学測定装置、各種分光計を使用する。 生理的条件において水溶液中に分散したナノカプセルからのインスリンの放出挙動を詳細に評価する。溶液中のグルコース濃度を変化させて、インスリンが放出される挙動をHPLCにより調査する。本研究ではカプセルの作製に、酸やアルカリ、有機溶剤、高温、などの条件を採用していないので、ナノカプセルから放出後もインスリンは高次構造及び生物活性を保持していると思われる。放出されたインスリンの立体構造を円偏光二色性(CD)及び赤外(IR)スペクトルにより解析する。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬の一部をすでに調達済みの試薬から合成して使用したため。 出席するよていの学会発表を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内学会で発表予定の研究成果を国外の学会で発表を行う。
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Research Products
(6 results)