2014 Fiscal Year Research-status Report
GPCRの、バイアスを含むシグナル制御機構の構造生物学的解明
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25460033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 卓見 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20451859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 一夫 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70196476)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NMR / GPCR / 膜蛋白質 / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質二重膜中におけるb2アドレナリン受容体 (b2AR) の動的構造平衡を明らかにするために、再構成高密度リポ蛋白質(rHDL)の脂質二重膜に再構成したb2アドレナリン受容体を調製した。SDS-PAGE解析およびRIリガンド結合アッセイの結果、収量は培地1Lあたり約150 ug、活性割合は80%以上であることが示された。 rHDL中のb2ARは巨大分子であり、重水素化によるNMRシグナルの先鋭化が必須である。そのため、昆虫細胞発現系での重水素化法の確立を行った。その結果、A, C, F, I, L, M, T, V, Y, Wを部分重水素化することで、観測原子に近接するプロトンを効率良く減らして、rHDL中のb2ARのシグナル強度を数倍以上増大させる手法の確立に成功した。 そこで次に、部分重水素化とメチオニン13C標識を両方施した b2AR -rHDLを調製して、逆アゴニスト存在下におけるNMRスペクトルを測定した。その結果、各メチオニン残基のNMRシグナルが、十分な感度で観測された。 次に、活性の異なる様々なリガンドが結合した状態における、重水素化b2AR -rHDLのNMRスペクトルを測定した上で、ミセル状態の解析において活性と対応するシグナル変化を示していたM82のシグナルを重ね合わせた。その結果、ミセル中の b2ARのスペクトルと比べると、部分アゴニスト結合状態の化学シフトが、より完全アゴニスト結合状態に近い値となっていた。このことは、rHDL中では、活性型の割合がやや多いことを示している。また、ミセル状態と比べると、部分アゴニスト結合状態のシグナルが顕著に広幅化しており、特に弱い部分アゴニスト結合状態では、シグナルが二つに割れていた。以上の現象から交換速度がミセルの時よりも小さいことを示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、ミセルに可溶化した状態における、各種リガンド結合状態のb2ARの動的構造平衡のNMR解析を行う予定であった。一方、今年度、ミセルよりも生理的な条件に近い、rHDLの脂質二重膜に再構成したb2ARの動的構造平衡を明らかにすることに成功した。さらに、その内容を投稿論文(Angew. Chem. int. Ed., 2014)に発表した。したがって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
b-アレスチンを介したシグナルをより強く活性化することが報告されている、カルベジロールやイソプロテレノールが結合した状態におけるb2アドレナリン受容体の動的構造平衡の解析を、ミセル可溶化状態とrHDLの脂質二重膜に再構成した状態の両方で行う。
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Causes of Carryover |
カルベジロールおよびイソプロテレノールが結合した状態におけるb2アドレナリン受容体のNMR解析に必要な安定同位体標識試薬の納品が、2014年度中に完了しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬が到着し次第、予定していたカルベジロールおよびイソプロテレノールが結合した状態におけるb2アドレナリン受容体のNMR解析を進める。同時に、当初計画していた、GRKおよびb-アレスチンとb2アドレナリン受容体の相互作用解析も進める。
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