2013 Fiscal Year Research-status Report
医薬品の乳化剤とコレステロールの吸収抑制剤としてのグリチルリチン酸の可能性
Project/Area Number |
25460043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
松岡 圭介 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90384635)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリチルリチン酸 / 会合体 / 臨界ミセル濃度 / 表面張力 / ミセル |
Research Abstract |
研究の初年度は主にグリチルリチン酸の会合体特性に焦点を当てた研究を行ってきた。グリチルリチン酸は分子内に3のカルボン酸基をもつため、その溶解度は水溶液のpHに依存することが分かった。その水への溶解度は分光光度計を用いて25℃で0.15mMと決定した。また、その溶解時のpHは5であった。故に、グリチルリチン酸を溶解させるには溶媒のpH調整が必要であり、緩衝水溶液中で測定すると、pH5以上で大きく溶解していくことが分かった。強酸性条件化では殆ど溶解しない。そこで、水溶液の調整条件をpH5以上に定めた。ピレン蛍光プローブ法と光散乱測定法から、グリチルリチン酸は水溶液中で会合することを確認し、その臨界ミセル濃度(cmc)は以下の値と決定した。2.7mM (pH=5)、4.4mM (pH=6)、8mM (pH=7)。pH=8の塩基性条件下では会合体は観測されなかった。pHの上昇と共に分子がイオン化し、親水性が増すため、cmcも上昇することが分かった。しかし、塩基性条件下では分子自身の親水性の増加により疎水性のバランスがくずれ、低濃度では会合しないことが分かった。その会合体サイズはSpring8(兵庫県)の小角X線散乱測定を利用して測定した。そのサイズは溶媒のpHに依存し、散乱パターンが異なることを見つけた。また、TEM及びCryo-SEMを用いて、会合体構造はpHが5-6の時は紐状ミセルを形成し、pH=7では球状ミセルを形成することが分かった。グリチルリチン酸を一般的な可溶化剤として使用する場合、水素イオン濃度に注意を払う必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年4月より、埼玉大学に採用されたため、研究の進捗を懸念したが、大学に存在している設備や公共の設備(SPRING8)を利用しながら、当初の予定していた項目は、ほぼ行うことができた。しかし、グリチルリチン酸水溶液の表面張力測定までは、測定装置がないため、行うことができなかった。そこで、H26年以降に予定していた他3種類のグリチルリチン酸類の会合体物性の研究も平成25年度から開始した。研究の進捗としては、ほぼ予定どおり進捗している。これまでの結果は中間報告として、第64回コロイドおよび界面化学討論会(名古屋工業大学)で「グリチルリチン酸の会合体形成」の題目で学会発表した。平成26年度中に、これまでのグリチルリチン酸類に関する研究成果をまとめ、論文投稿する予定。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、3種類のグリチルリチン酸類の会合体の構造解析とその水溶液物性を明らかにする。SPRING8(兵庫県)での小角X線散乱測定も実験枠が取れれば、引き続き行い、会合体構造を明らかにする。また、Cryo-電子顕微鏡を用いた会合体構造解析も行う。更に、表面張力測定機を用いて、3種類のグリチルリチン酸類水溶液の表面張力測定を行う。表面張力の低下は水溶性物質の乳化機能と間接的に関連しており、難水溶性物質(薬物等)の乳化能力を持っているか評価する。グリチルリチン酸添加によるコレステロールの可溶化量低下機能の評価は当初の予定していた平成27年度に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度当初に想定していた金額に対して約3%の差額範囲であり、当初の計画との差ほとんどない。これは、平成25年度に埼玉大学へ転任したことにより、研究に必要なものが変更になったことに起因する。 その差額分は本年度必要としている、グリチルリチン酸の類似化合物の試薬の購入に当てる予定。
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Research Products
(1 results)