2014 Fiscal Year Research-status Report
医薬品の乳化剤とコレステロールの吸収抑制剤としてのグリチルリチン酸の可能性
Project/Area Number |
25460043
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
松岡 圭介 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90384635)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | グリチルリチン酸 / 会合体 / 臨界ミセル濃度 / 表面張力 / ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
グリチルリチン酸の類似化合物であるグリチルレチン酸3‐O‐グルクロニドはグリチルリチン酸からグルクロン酸が1つ少ない分子構造をもつ。両親媒性物質の会合体形成は分子中の疎水基と親水基のバランスが影響を及ぼす。本年度の前半は、糖親水基が1つ減少したグリチルレチン酸3‐O‐グルクロニドの会合体形成に関する研究を行った。ピレン蛍光プローブ法、レーザー散乱強度の測定から臨界ミセル濃度(cmc)の決定をした。会合体構造は、動的光散乱測定法からみかけの流体力学半径を測定した。更に、TEMとCryo-SEMによる会合体イメージの撮影を行った。グリチルレチン酸3‐O‐グルクロニドのpH7.0におけるcmcは約2mMであることが分かった。グリチルリチン酸のcmc値の5mMと比較すると、糖親水基の減少により低濃度で会合することが分かった。会合体構造に関しては、cmc近傍で流体力学半径が約100nmの会合体を形成し、そのサイズは濃度と共に増加し、約200nmまで成長した。電子顕微鏡解析の結果、その会合体はベクシルに類似した会合体であり、濃度増加とともに会合体同士が合一しているように見えた。ひも状ミセルを形成するグリチルリチン酸とは会合体構造が大きく異なることが分かった。 本年度の後半は表面張力測定機を用いて、グリチルリチン酸の表面張力物性を測定した。その表面張力は一般的な直鎖の炭化水素系界面活性剤の表面張力能と同等であり、界面活性剤としても十分に活用できることが分かった。しかし、緩衝溶液を用いてpHを中性に近づけると、ミセル形成を行わないことが分かった。これは、ピレンの蛍光プローブ法でも確かめている現象であり、複数のカルボン酸基をもつグリチルリチン酸は水素イオン濃度の影響を受けることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、実験に関しては進んでいる。しかし、SPRING8での、放射光を用いた会合体構造決定の実験を計画どおり進めることができなかった。来年度、再びSPRING8での実験申請を行い、実施できるようにしたい。本年度までの研究成果の中間報告として、日本油化学会で「グリチルレチン酸3‐O‐グルクロニドの会合体形成」というタイトルで口頭発表を行った。これまでの研究成果から、論文として2報程度発表することを計画しているが、実験データを全て揃えることができず、本年度は発表することができなかった。次年度では必ず論文発表を行い、これまでの重要な結果を広く周知できるようにしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
グリチルリチン酸の類似化合物のglycyrrhetinic acidの会合及び界面物性の研究を行う。項目としては、①表面張力特性、②緩衝溶液中での臨界ミセル濃度測定、③電子顕微鏡と光散乱測定、小角X線散乱測定による会合体構造の決定。 次に、グリチルリチン酸のコレステロール吸収抑制効果に関する研究を行う。モデル腸液、モデル胆汁中で実験を行う。①グリチルリチン酸の添加に伴う会合体構造(コレステロールキャリア構造)の変化、②グリチルリチン酸の添加に伴うコレステロールの最大可溶化の定量、③コレステロールとグリチルリチン酸の可溶化現象の熱力学的解析。最終年度でもあるため、研究の総括を行い、これまでの結果を本年度中に論文として発表をしたい。
|