2013 Fiscal Year Research-status Report
MRIの分子イメージング技術とQbDアプローチを基盤とするエマルション製剤の設計
Project/Area Number |
25460045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
大貫 義則 星薬科大学, 薬学部, 助教 (10350224)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エマルション製剤 / クリーム剤 / MRI / 製剤安定性 / 水分子運動性 |
Research Abstract |
Oil-in-water (o/w)エマルションは、クリーム剤などの外用剤に広く利用されている。エマルションの物理安定性は、分散する油滴が凝集し、クリーミングが進むにつれて低下していく。したがって、エマルション製剤の製剤安定性を正確に評価するためには、クリーミング挙動を正確に理解することが非常に重要である。近年、我々は、MRIの水分子運動性可視化技術を応用し、エマルション製剤の製剤安定性を非破壊的かつ詳細に評価できる手法を考案した。本申請課題では、上記のMRI技術を活用し、製剤安定性に優れたエマルション製剤の設計を行う。なお、本課題の特色として、エマルション製剤の製剤研究に”次世代の製剤品質管理システム” として注目されるQuality by Design(QbD)アプローチを活用しながら、検討を進めていくこととする。初年度は、エマルション製剤の初期物性に対する設計変数の寄与について検討を行った。検討に用いた試料は、一般的なクリーム剤に使用されるエマルションの処方を参考に、各種設計変数(界面活性剤添加量、HLB値および水分量)を変化させて設計し、転相乳化法により調製した。調製した試料の初期物性を理解するためにそれぞれのMRパラメータ(T1緩和時間、拡散係数)および粘度を測定した。そして、それら初期物性と設計変数との因果関係を応答曲面法を利用して評価した。検討の結果、設計変数による各特性値への作用を明確にすることができた。次年度以降は、MRIを用いて試料の製剤安定性を詳細に評価し、Kohonenの自己組織化マップや応答曲面法などの各種手法を駆使して、要因-初期物性‐製剤特性間の因果関係を明確にしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当課題は、エマルション製剤の製剤研究に”次世代の製剤品質管理システム” として注目されるQuality by Design(QbD)アプローチを応用し、最終的には、物理安定性に優れた製剤を調製するためのデザインスペースの設定を試みる。申請書には、初年度の実験計画として、モデル製剤の処方検討と、調製したモデル製剤の初期物性[MRパラメータ(T1緩和時間および拡散係数)や粘度など]の評価を挙げた。現在時点では、研究は非常に順調に進んでいる。まず、モデル製剤の処方検討に関しては、一般的なクリーム剤に使用されるエマルションの処方を参考にし、基準となる標準処方を早々に決定することができた。また、本改題では、製剤の物性や物理安定性に影響する因子として水分量、界面活性剤添加量、HLB値を選択しているが、これらの変動範囲も、過去の事例や予備実験のデータなどを参考に効率よく決定した。続いて、調製した製剤について各種物性(MRパラメータおよび粘度)を測定したところ、これらに対して、設計変数が強く影響することが明らかになった。例えば、T1緩和時間は、水分量の減少、界面活性剤量の増加、HLB値の増大に伴って短縮した。また拡散係数は、水分量の減少、界面活性剤の減少、HLB値の低下に伴って低下した。試料の粘度は、水分量の減少および界面活性剤の増加に伴って増大する傾向が認められた。以上のように、本課題は順調に進んでいるため、次年度は、申請書に従って、試料の製剤安定性についてMRIを用いて詳細に評価していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、本申請課題は計画通り順調に進んでいるため、今後も引き続き申請書の研究計画に沿って研究を進めていく。初年度の検討で、エマルション製剤の初期物性に対する設計変数の寄与を評価することができたので、次年度はMRIを用いて製剤安定性評価を進めていく。実験方法としては、チューブに充填した試料を、室温または60℃で保存し、経時的にMRIを用いて試料内部の観察を行う。過去の研究結果から、エマルションにクリーミングが生じると、クリーミング相と水相中では、水分子運動性に違いが見られ、水相中の水分子のT1緩和時間や拡散係数は、クリーミング相に比べて高い値を示すことが明らかになっている。また、クリーミングの検出感度も目視に比べて、高いことを明らかにしている。本検討の場合、チューブに充てんしたエマルション中でクリーミングが生じると、油滴が上部へ移行するため、クリーミングの進行に伴ってチューブ下部の水分子運動性は増大すると予想される。そこで、チューブ下部の特定部位を関心領域として設定し、その領域における水のMRパラメータ(T1緩和時間または拡散係数)を経時的に測定する。そして、各試料でパラメータの経時的な変化率を求め、それらをもとに試料の製剤安定性を評価する。製剤安定性に加え、初年度に検討した初期物性などの実験データを統合し、Kohonenの自己組織化マップ(SOM)やマルチスプライン補間を利用した応答曲面法(RSM-S)などの手法を利用して、要因‐特性間の因果関係を明確にし、さらに最終的には物理安定性に優れるエマルション製剤の調製できるデザインスペースの設定を行いたい。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Prediction of tablet characteristics from residual stress distribution estimated by finite element method2013
Author(s)
Hayashi, Y., Miura, T., Shimada, T., Onuki. Y., Obata, Y., Takayama, K.
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Journal Title
J. Pharm Sci
Volume: 102
Pages: 3678-3686
DOI
Peer Reviewed
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