2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内小器官におけるドパミンD2L受容体活性化機構の解明
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25460090
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩田 倫史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 特任准教授 (00374950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 浩司 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90136721)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドパミン D2 受容体 / 精神疾患 / 細胞内シグナル伝達 / PDGF 受容体 / Rabex-5 / 行動制御回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドパミン D2 受容体は細胞内第 3 ループの 29 アミノ酸残基の有無により、D2 受容体 Long アイソフォーム (D2L 受容体) と Short アイソフォーム (D2S 受容体) が存在する。 D2 受容体には統合失調症等の精神疾患に共通する遺伝子多型が見出されることから、 D2 受容体は精神機能に重要な役割を担っている。しかしながら、 D2 受容体のシグナル伝達系の異常と精神疾患との詳細な関与は不明である。本研究では、D2L 受容体アイソフォーム特異的な細胞内シグナル伝達系に着目し研究を行った。D2L 受容体に結合するタンパク質を質量分析により検討し、Rabex-5 が同定された。 Rabex-5 は初期エンドソームの形成に関与する低分子量 GTP 結合タンパク質である Rab5 のグアニンヌクレオチド交換因子 (GEF) である。興味深いことに、マウス線条体においてドパミンや D2 受容体刺激薬 quinpirole により GTP 型 Rab5 が有意に増加し、 D2L 受容体と PDGF 受容体-β (PDGFRβ) を内包した初期エンドソームの形成が促進された。さらに、エンドソームがゴルジ体に局在する D2L 受容体と複合体を形成し、 MAPK/ERK シグナルの持続的活性化を引き起こすことを明らかとした。また、 行動制御回路との関連性を検討するために、 D2 受容体阻害剤ハロペリドール投与によるカタレプシーを測定したところ、 D2LR ヘテロマウスで見られたカタレプシーの減弱が Rab5 の過剰発現により有意に改善した。これらの結果より、線条体において D2L 受容体は Rabex-5/PDGFRβ を介した行動制御回路に関与すると考えられる。ドパミン D2 受容体は統合失調症をはじめとした精神疾患において重要な役割を担う受容体であり、D2L 受容体の行動制御回路における機能的役割を明らかにすることは今後の精神疾患の原因解明と治療薬の開発に貢献できる。
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