2014 Fiscal Year Research-status Report
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25460097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 さかえ 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (20335491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永山 勝也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70363398)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍微小環境は、腫瘍を構成している細胞の種類や低酸素などの物理的ストレス、環境によって誘導される細胞の遺伝子発現変化など、さまざまな要因が組み合わさったバランスの上に成り立っている。本研究では、腫瘍内のがん細胞、間質細胞の種類や性質およびストレス領域の局在の変化を調べ、これらが腫瘍の増殖とどのように連動しているのかを明らかにすることを目的としており、腫瘍微小環境システムを通して腫瘍の状態や薬剤の作用を評価する新しいモデルの構築を目指している。 平成26年度は、単一細胞から遺伝子発現解析およびエクソーム解析を行う実験系を確立し、成長期の腫瘍内において個々の細胞がどのような遺伝子を発現しているのかを調べた。マウスの皮下移植モデルおよびスフェロイド培養細胞を用い、腫瘍を低酸素プローブにより標識した後に単離したがん細胞の遺伝子発現を調べた結果、低酸素領域にある細胞で活性化している遺伝子が低酸素応答、小胞体ストレス応答などの機構に関連していることを明らかにした。腫瘍の増殖や血管新生を誘導することが知られている既報の遺伝子の一部については定量PCRにより遺伝子発現の変化を確認し、組織免疫染色により腫瘍内でのタンパク質の局在や発現細胞の割合を明らかにした。また、実験により得られた生物学的データを利用した腫瘍微小環境のモデル化を目指し、腫瘍におけるがん細胞の増殖と血管新生について数値シミュレーションによる解析モデルを構築し、血管誘導因子の分布、低酸素領域の分布およびがん細胞の壊死の発生を再現し画像化することができた。数理モデルにより得られた結果は実験データと比較し、より実現象に近いシミュレーションのための条件設定を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサー、フローサイトメトリー、シングルセル・ゲノム解析用の自動化ソリューションの立ち上げを行い、細胞の解析を効率的に進めることができた。組織免疫染色は条件検討を受託試験業者に依頼し、実験については専門家からのアドバイスを得て迅速に良好な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍増殖および血管新生の数値シミュレーションについては、すでにモデルが構築されてストレス領域の画像化が可能になっており、腫瘍間質細胞の影響を考慮した腫瘍モデルの検討を予定よりも早く開始している。平成27年度には研究計画に従って、シミュレーションの結果と実験データとの比較検証を進め、間質細胞やストレス領域の局在の変化と遺伝子発現の変化および腫瘍増殖との関連について解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成27年度請求額とあわせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はシミュレーションの結果を検証するための分子生物学的実験に必要な経費として使用し、平成27年度請求額とあわせ、腫瘍微小環境を評価するモデルの構築と腫瘍微小環境の制御にかかわる分子機序の解析に使用する予定である。
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