2015 Fiscal Year Annual Research Report
カチオンチャネル制御によるミクログリア活性化調節機構の解明と病態応用
Project/Area Number |
25460098
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白川 久志 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50402798)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ミクログリア / 遊走 / 活性酸素種 / TRPV1 / TRPM2 / 脳内炎症 / 脳虚血傷害 / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに脳内ミクログリア遊走における活性酸素種産生を介したTRPV1の関与が示されたことから、本年度ははじめに活性酸素種やミクログリアの関与する重篤な中枢性疾患として脳虚血再灌流傷害に着目し、中大脳動脈閉塞マウスを用いて、TRPV1遺伝子欠損およびTRPV1阻害薬capsazepineの投与による脳虚血再灌流傷害への影響を評価した。TRPV1遺伝子欠損やcapsazepine投与群では対照群と比較し、再灌流24、48時間後において神経症状および運動機能は改善し、梗塞巣体積は有意に減少したことから、脳虚血再灌流傷害においてTRPV1が病態の増悪に関与していることが明らかとなった。一方、免疫組織化学的検討よりアストロサイトおよびミクログリアの異常活性化や好中球の浸潤はTRPV1を介した増悪には直接関与しないことも示された。次に一昨年度ミクログリアにおける機能を報告したTRPM2に着目し、慢性的な炎症を伴う中枢性脱髄疾患である多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のマウスを用いて、TRPM2遺伝子欠損の影響を評価した。野生型およびTRPM2欠損マウスにEAEを惹起したところ、TRPM2欠損マウスにおいては臨床スコアの上昇が顕著に改善された。TRPM2阻害作用を有するmiconazoleを発症後に投与しても、臨床スコアの有意な改善が観察された。免疫組織化学および定量的RT-PCR、ELISAを用いた検討より、TRPM2欠損によりT細胞機能変化は影響を受けなかったものの、一部の炎症性サイトカインの産生増大およびミクログリア/マクロファージ数の増加が特異的に抑制されることが明らかとなった。以上の結果より、多発性硬化症モデルマウスにおいてTRPM2が病態の増悪に関与し、そのメカニズムの一部としてミクログリア/マクロファージの活性化抑制が関与することが示された。
|