2013 Fiscal Year Research-status Report
植物乳酸菌による口腔内バイオフィルム形成阻害の分子機構の解明
Project/Area Number |
25460121
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野田 正文 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 特任講師 (40457289)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 政則 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (30106801)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 遺伝子破壊ベクター / バイオサーファクタント / プロバイオティクス |
Research Abstract |
本年度はLb. reuteri BM53-1株の産生するバイオフィルム形成阻害物質の解析を主目的として実験を進めた。まず、培養上清から直接疎水性の高い有機溶媒で阻害物質の抽出操作を進めた場合には、活性が完全に失われることが確認された。そこで、種々の樹脂を用いての精製を試みたが、ゲルろ過クロマトグラフィー以外の効果は低く、目的物質の精製には不向きであった。 一方、ゲルろ過クロマトグラフィーによる粗精製画分の呈色試験の結果から、想定していた可能性のうち、糖鎖構造を有する物質の可能性は低いと考えられたため、バイオサーファクタントの可能性に絞って精製を進めることとした。いくつか手法を試みた結果、培養上清を強酸性下で静置することによって生じた沈殿からクロロホルム/メタノール (2:1) 混液で抽出されてくる物質中に、バイオフィルム阻害活性の本体があることがわかった。BM53-1株より抽出されたこの画分には、他の複数の乳酸菌種の培養上清から同様に抽出した場合には認められない特異的なピークがHPLCにおいて確認された。現在、構造決定に向けて更なる精製を進めている。 生合成遺伝子のクローニングについては、トランスポゾンを用いた非産生ミュータントを構築する方法でのアプローチを試みた。具体的には、トランスポゾンとしてLactobacillus属乳酸菌においてそのランダム挿入性が報告されているTn10を選択し、その構成要素のうち転移に必要な末端繰り返し配列 (IS10 ends) および転移を担う酵素であるトランスポザーゼ (Tase) を利用した。選択マーカーとしてエリスロマイシン耐性遺伝子を設定し、本研究室で作製した乳酸菌-大腸菌シャトルベクターpLES003-b上にmini-Tn10として再構築することとした。現在、ベクターの機能性の確認を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BM53-1株が産生するバイオフィルム形成阻害物質について、安定して産生させる条件は確立できている。但し、精製、未精製の状態を問わず、長期間保存すると活性が低下するため、必要に応じて調製する必要がある。 目的物質について、化学構造の決定にまでは至っていないが、文献を参考にバイオサーファクタントの抽出法をいくつか試した結果、活性画分の分取に成功した。また、この画分にはBM53-1株培養上清に由来するものにのみ特定のピークが確認されている。 生合成遺伝子のクローニングに関しては、化学構造の決定に至らなかったため、特定のプローブ分子を用いてクローニングする方法ではなく、トランスポゾンを用いた乳酸菌におけるランダム遺伝子破壊ベクターの構築を行った。この方法では、非産生ミュータントをスクリーニングによって見出し、耐性マーカーの挿入によって破壊された遺伝子をクローニングすることで、生合成に必要な遺伝子を容易に特定することが可能と考える。 既に形成されたバイオフィルムを分解する乳酸菌株については、現在のところ取得に成功していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大筋に変更は無く、実施計画の通り、継続して研究を進めていく予定である。 平成26年度に計画している、大腸菌ホスト・ベクター系を用いたミュータンス菌由来のglucosyltransferase発現系構築については既に着手しているが、酵素の安定性が悪い場合、可溶性タンパク質タグ等を利用した融合タンパク質として解析することも検討している。 なお、既に形成されたバイオフィルムを分解する乳酸菌のスクリーニングについては、乳酸菌に限らず、他の微生物種についても拡大していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手持ちのカラムでは活性画分の精製が困難であると判断されたため、年度末間近ではあったがメーカー担当者と相談しながら最適なカラムを探すことにした。結果、キャンペーン価格の適用されるカラムを予定よりも安価で購入することが出来、次年度使用額が生じた。 HPLCの精製操作に必要なフィルター、シリンジを補充する予定であり、H26年度開始時には速やかに執行する。
|
Research Products
(1 results)