2014 Fiscal Year Research-status Report
植物乳酸菌による口腔内バイオフィルム形成阻害の分子機構の解明
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25460121
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野田 正文 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 特任講師 (40457289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 政則 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (30106801)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子破壊ベクター / バイオサーファクタント / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Lb. reuteri BM53-1の産生するバイオフィルム形成阻害物質の精製と、その作用機構の解明を主目的として実験を進めた。昨年度までの実験結果から、HPLCによる精製が不向きと考えられたため、有機溶媒による分画・抽出と、分取TLC法により活性物質の精製を行うとともに、HPLCカラム条件の検討も実施した。実験の結果、極性有機溶媒に可溶なポリマー分析が可能なカラムにおいて、水溶液の状態で単一ピークが確認される状態まで精製を行うことができたものの、有機溶媒に溶解させて分析すると、4つのピークに分離することが確認された。水溶液の状態では10 kDaの限外濾過膜で濃縮可能な活性物質が有機溶媒では濃縮不可能となること、そして再び水溶液に戻すと濃縮可能となることから、本活性物質は少なくとも4つの分子より成る、ヘテロポリマーの状態で存在していることが示された。 活性物質を高濃度添加した状態で観察すると、一旦はバイオフィルム様の物質が形成されるものの、それはプレート面に固着することなく、また水洗により速やかに飛散する。リアルタイムPCRでも、不溶性グルカンの形成に必要な各遺伝子の転写は阻害されておらず、活性物質はプレート面への付着阻害作用と、グルカン自体の粘着性の低下により作用を示している可能性が考えられた。 一方で、生合成遺伝子の取得を目指し、トランスポゾンTn10を利用した乳酸菌用のランダム変異導入用ベクターの構築を行った。導入後のベクター残存性を考慮し、大腸菌でのみ増幅可能なプラスミドとして構築後、乳酸菌に導入した。サザン解析により、ランダム変異の導入は確認できたものの、導入効率が低く、ランダムスクリーニングには現段階では不向きであった。現在、導入後にプラスミドを容易に脱落させることができるよう、温度感受性の大腸菌-乳酸菌シャトルベクターとして再構築を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性物質の精製法は確立できたと考えるが、複数分子よりなるヘテロポリマーであり、構造決定は非常に困難を伴うことが予想される。従って、生合成遺伝子、ならびに作用機序の解明について優先的に取り組んでいる。 活性物質存在下でもグルカン生合成に必須である遺伝子群の転写はなされており、実際に不溶性グルカン自体の産生は見られていることから、生合成酵素の活性バランスを変え、粘着性を低下させている可能性が高い。現在、ミュータンス菌より不溶性グルカン生合成酵素の粗精製を行い、阻害様式の決定に向けた予備実験を行っている。 一方で、ヒト口腔内より分離された乳酸菌株とミュータンス菌との共培養を行ったところ、特定の分離株において、バイオフィルム形成が促進される結果が観察された。 合わせて、より効率的に活性物質を産生する培地の検討を行った。MRS培地をはじめ、M17培地、BHI培地、Mueller-Hinton培地など、市販の培地を使用した場合にも活性物質の産生は確認されたが、MRS培地の産生性が最も高かった。また、プロバイオティクスとしての応用を見据え、食用可能な培地での産生性を調査したところ、人参汁に酒粕を添加してBM53-1株を培養した場合に、その培養液はMRS培地よりもより高い活性を示すことが明らかとなった。これにより、今後のアッセイに使用する活性物質をより容易に得ることが可能となったと考える。 また、新たに植物由来の乳酸菌の分離・同定も行ったが、バイオフィルム形成阻害活性・分解活性を有する菌株は得られていない。この点については引き続き分離を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
活性物質の添加によって、不溶性グルカンの生合成遺伝子群の転写が消失している様子は観察されなかったため、今後はそれら3つの生合成酵素における活性阻害に重点をおいて研究を進める。但し、転写の様子については、引き続き詳細に解析を進める予定である。 酵素活性については、3つの生合成酵素のバランスが不溶性グルカンの粘着性の変化に影響を及ぼすことが報告されており、活性物質における各酵素の阻害について、反応速度論的な解析を実施する予定である。 バイオフィルム形成阻害により、不溶性グルカン生合成酵素遺伝子群以外のクォラムセンシングに関与する遺伝子群に変化が見られる可能性は考えられるため、この点に関しては当初の計画通り解析を行う予定である。
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[Journal Article] Oral lactic acid bacteria that are concerned with the occurrence and/or progression of dental caries in Japanese preschool children.2015
Author(s)
Shimada, A., Noda, M., Matoba, Y., Kumagai, T., Kozai, K., Sugiyama, M.
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Journal Title
Biosci. Microbiota Food Health.
Volume: 34
Pages: 29-36
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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