2013 Fiscal Year Research-status Report
機能性多糖高含有カラスビシャクの選抜と高効率生産を目指した基礎研究
Project/Area Number |
25460124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 宏幸 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30253470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 壽彦 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授(Associate Professor) (40213540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カラスビシャク / 半夏 / 機能性多糖 / イムノアッセイ / 植物工場 |
Research Abstract |
半夏は上焦の水滞によっておこる悪心、嘔吐を緩解する利水薬であり、唾液分泌促進作用、拘束水浸ストレス潰瘍の抑制作用、腸管蠕動運動の促進作用などの消化器系に対する作用が報告されている。様々な薬効解析結果の中でも、臨床的に確認されている鎮吐作用は半夏の主要薬理作用といえるもので、その有用成分としてアラバンを主体とする水溶性多糖が知られており、半夏の品質を左右する最も重要な指標といえる。 平成25年度は、カラスビシャク由来水溶性多糖を認識するモノクローナル抗体(MAb)の作製を中心に行った。半夏水性エキスから多糖画分(PT-PS)を調製し、これを免疫原としてマウスに免疫感作を行った。数度の免疫感作の後、十分な抗体価が得られた段階で、脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。続いて、ポリエチレングリコール(PEG)法により細胞融合を行い、複数のハイブリドーマの中でPT-PSに対して特異的な反応性を有するMAbを産生する候補を1種を見出した。クローニングの後、ハイブリドーマを大量培養し、続いて培養上清中に分泌されたMAbの精製を行った。本MAbの反応性、特異性を精査した結果、十分な反応性を有しており、カラスビシャクに極めて高い特異性を有していることを確認した。 環境制御施設を用いたカラスビシャク養液栽培法の確立については、気温・湿度が一定に制御されたファイトトロンガラス室(3室:気温20、25、30℃)で試験栽培を行ない、カラスビシャクの生育に対する地下水位、気温の影響を調査して、制御環境下における基礎的な栽培条件の検討を行った。25、30℃栽培区で良好な生育を確認した。また、地下水位を検討した結果、地下水位が高い(培地下-4cm)の方が生育もむかごの収量も優れていた。以上のように、植物工場でカラスビシャクを栽培する基本的な条件を見極めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したカラスビシャク由来水溶性多糖(PT-PS)を認識するモノクローナル抗体(MAb)を、PT-PSそのものを免疫原とすることで極めて特異性の高いMAbを得ることに成功した。一度の細胞融合により理想的な特性を有するMAbを得られたことは、本研究の目標とするPT-PS高含有カラスビシャクの育種のスムーズな進行につながる成果と評価している。 また、カラスビシャクの植物工場での効率的な生産を目指した研究内容では、排水性の高い基材を用いることで、良好な生育を実現できた。さらに、生育に適した栽培温度、給水環境についても有益な情報を得ることができたことから、本実験内容に関しても計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
有用性が確認できたMAbを用いて簡便、高感度な酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)の確立を目指す。今回開発するELISAは、これまで困難とされてきた生理活性多糖の定量的評価に威力を発揮すると考えている。 一般的なELISAによる比色定量において、十分な感度が得られない場合には、化学発光法を取り入れた超高感度イムノアッセイの構築を実施する計画である。既に、申請者は化学発光を検出可能なプレートリーダーを有しており、当該先端的な分析を行える体制を整えている。 国内各所からカラスビシャクを入手し、それらの試料について抗PT-PS MAbを用いたイムノアッセイを駆使したスクリーニングを行うことでPT-PS高含有個体を選抜する。さらに、PT-PSの含有量に加え、塊茎の大きさ、重量など様々な観点から評価を行うことで付加価値の高い系統の候補を絞り込む。続いて、高度制御植物工場に適したカラスビシャクの効率的な生産研究に供するために、既に本研究室で確立している組織培養技術を用いて優良系統のクローン増殖を行う。本法を用いることで、品質の安定した多数の優良系統を生産し、植物工場を活用した栽培研究に供給可能な体制を確立する。前年度に確立した養液栽培法により、制御環境下において、気温、湿度、光強度(PPFD) および日長を統一した条件で比較を行なう。塊茎の生育状況やイムノアッセイを用いてPT-PS含量を精査し、付加価値の高い最適栽培条件を最終的に決定する。以上の方法により、生育条件を発達ステージに合わせて最適に調節することで安定した高品質カラスビシャクの生産を可能にするシステムを構築する。
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