2014 Fiscal Year Research-status Report
機能性多糖高含有カラスビシャクの選抜と高効率生産を目指した基礎研究
Project/Area Number |
25460124
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 宏幸 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30253470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 壽彦 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40213540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カラスビシャク / 半夏 / 水溶性多糖 / ELISA / 植物工場 / 国内栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、カラスビシャクに含まれる水溶性多糖(PTP)に対するモノクローナル抗体の作製と免疫化学的分析手法の開発について検討した。既に作製していたモノクローナル抗体は、非加熱のカラスビシャク由来水溶性多糖に対する高い選択性を有しており、カラスビシャクや半夏の鑑別には有用なものであったものの、加熱処理した水溶性多糖には反応しないことが判明した。そこで、PTPを加熱処理したのち、ウサギを用いてPTPに対する特異性を有する抗体が産生されるかどうかを確認した。その結果、カラスビシャクの熱水抽出液を高い特異性を持って認識するポリクローナル抗体の産生を確認することができた。本抗体を用いて、共同研究者である江口博士により栽培されたサンプルの測定を行った。山科と雲仙で採取したカラスビシャクを20,25,30℃の3条件で、自然日長により栽培したサンプルを用いた。熱水抽出した後、適切に希釈して直接的ELISAにより定量的な評価を行った。その結果、25,30℃の条件で栽培したサンプルが有為にPTP含量が高いことが判明した。 また、夏と冬の二期栽培し、収穫したサンプルについて測定した結果、夏に栽培したものが有為に含量が高いことが判明した。また、全てのサンプル中のPTP含は、市販品の中のPTP含量よりも高く、品質面で問題がないことが明らかとなった。また、収量については、以下水位4cmの条件で15週間の栽培した場合に、鮮重量で3倍に増加していた。今回の成果から、日長を制御することによりカラスビシャクの植物工場での周年栽培が可能なことを示すことができた。 PTPに対するモノクローナル抗体(MAb)の作製は、現在PTPを特異的に認識するMAbを産生する3種類のハイブリドーマを得ることに成功した。現在ハイブリドーマのクローニングを行っており、今後、MAbを用いた上述のカラスビシャクサンプルの分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、カラスビシャク由来多糖(PTP)に対する抗体の作製を達成した。ポリクローナル抗体を用いた免疫化学的分析手法であるELISAを開発し、九州大学生物環境利用推進センターの人工気象設備で栽培されたカラスビシャクの分析を行った。その結果、当初計画したカラスビシャクの品質評価を可能とする新規な手法を開発することができたことから、当該研究は順調に進んでいると判断できる。モノクローナル抗体の作製も、近々完了することから、より抗原選択性が高い抗体を得た後、より精度の高いカラスビシャク品質評価法を構築していきたいと考えている。 高品質な半夏の生産を目指した本研究では、多数の野生のカラスビシャクを採取する必要があるが、すでに24か所からサンプルを得ており、九州大学生物環境利用推進センターで栽培管理している。これまでに山科と雲仙で採取したサンプルについて分析した結果、同一採取地から得られたものでも、PTP含量がかなり異なっていることを確認しており、この結果はPTPを高濃度に蓄積するサンプルが得られる可能性は高いものと考えている。 栽培手法についても、既に周年栽培が可能であることを示すことに成功しており、今後は日長などの制御を行うことで、更に最適化された栽培法が確立できるものと考えている。 以上のような理由により、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、近々得られるカラスビシャクPTPに対するモノクローナル抗体の評価を行い、PTPやカラスビシャクサンプルに対する反応性、特異性を明らかにした後、高品質カラスビシャクの選抜に適用できる特性を有しているかどうかを検証する。その後、更に栽培手法の最適化を進める過程で得られるカラスビシャクサンプルの評価に適応していく計画である。 また、日本各地から採取してきたカラスビシャクについて、同一条件で栽培した後、収量に加えてPTP含量も考慮した上で、植物工場での栽培に最適の系統の選抜を進める計画である。 さらに、組織培養技術を応用したカラスビシャクの大量育苗法の開発も進めていく計画である。既に、本研究室ではカラスビシャクの組織培養による育苗法を開発しており、既報を参考に研究を進めることでスムーズに成果を出せるものと考えている。 加えて、PTPの鎮嘔吐作用についても追試を行う必要があると考えており、今後の重要な課題と捉えている。
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