2014 Fiscal Year Research-status Report
薬剤排出ポンプ遺伝子群の発現制御へのカルシウムシグナルの関与
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25460128
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤田 憲一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10285281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼杵 克之助 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30244651)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | anethole / drug resistance / antifungal / PDR5 / PMR1 / LGE1 |
Outline of Annual Research Achievements |
trans-anethole (anethole)は、アニスの果実から抽出される精油の主成分であり、香辛料として食品への添加が許可されている。本物質はdodecanolを含む他の薬剤と併用することで相乗的な抗真菌作用を発揮する。dodecanolストレスによって出芽酵母のコロニー形成単位(CFU)は一旦低下するが、その後CFUは回復する。そのストレスからの回復には多剤耐性薬剤排出ポンプPDR5およびその転写因子PDR3の転写亢進が関与し、anetholeはその亢進を抑制する。本年度は、薬剤がPdr5を亢進させる系を一種の薬剤ストレス応答機構としてとらえて、それらに与えるanetholeの影響を他のストレス応答機構などと比較しながら解析した。 ミトコンドリアDNA欠損によるストレスがLge1に依存してPdr3およびPdr5を亢進させて薬剤耐性を示すことが報告されている。LGE1欠損株は、dodecanolに対して感受性となり相乗効果も消失していた。加えて、本欠損株において、dodecanolはPDR3およびPDR5の転写亢進を抑制し、逆にanetholeとの併用処理ではそれらの発現抑制は弱められた。一方、相乗的抗真菌作用も示す免疫抑制剤FK506は細胞質Ca2+の低下に関わるゴルジ体Ca2+-ATPase Pmr1を抑制することが報告されている。dodecanolは細胞質Ca2+濃度を一過的に上昇させたが、anethole共存下ではその上昇が維持されていた。さらに、PMR1欠損株では長時間のdodecanol処理後も濃度上昇が維持されていた。以上の結果より、anetholeによる相乗的な抗真菌作用には少なくともLge1に依存した薬剤排出ポンプ亢進の抑制、およびPmr1の抑制によるCa2+ストレスからの回復阻害が関与していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤ストレスによって引き起こされる細胞内カルシウム濃度の異常は、カルシウムポンプの働きによって正常になり、その結果、薬剤ストレスが解消することが明らかとなった。以上の結果は、薬剤排出によって薬効が減弱することと相関している。anetholeはそのカルシウムポンプの一つであるゴルジ体pmr1の抑制を介してカルシウムの代謝異常を持続させることが明らかとなった。以上の結果は前年度予想していたが、実験の結果、それが正しいことが検証されたため、本申請課題の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウム代謝異常が具体的に薬剤排出に、どうか変わっているのかは依然として不明である。今後の課題としては、細胞内カルシウム蓄積が薬剤排出ポンプの遺伝子発現及びそのタンパク質の機能に与える影響をミトコンドリアを起点とする系も含めてシグナル伝達系から解析してみることになった。
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Causes of Carryover |
次年度に行いたい実験の試薬代を捻出するために、研究費の節約を行った結果、余剰金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
67,596円は、次年度に行いたい実験、遺伝子発現解析実験やカルシウムイメージングのための試薬代として使用したい。
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Research Products
(5 results)