2015 Fiscal Year Research-status Report
アミド型軸不斉に関する基礎研究と医薬品化学への展開
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25460154
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
夏苅 英昭 帝京大学, 医療共通教育研究センター, 教授 (00334334)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軸不斉 / 立体化学 / キラリティー / ベンゾジアゼピン / バソプレッシン |
Outline of Annual Research Achievements |
生物活性化合物の部分構造として広く存在するベンズアミド(あるいはアニリド)構造には、軸性キラリティーが潜在している。このようなアミド型軸不斉が生物活性の発現において重要な役割を果たしていることを明らかにし、最終的には、新たな生物活性物質、医薬品シードの創製をめざすものである。この周辺研究を総説として公表(有機合成化学協会誌、2016, 74, 56-68)するとともに、今年度は、生物活性化合物の基本骨格として頻用されているベンゼン環縮合含窒素7員環構造を持つ化合物について、以下の2項目に取り組んだ。(1) N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン骨格の立体化学の再解明、 (2) N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン誘導体のバソプレシン受容体拮抗作用の活性発現構造の解明。 本年度の主要な成果は以下の2点である。(1) については、N-ベンゾイル-ベンゾアゼピン骨格の立体構造を詳細に検討した。その結果、従来報告されていた立体化学(M. Qadir et al., J. Org. Chem. 2005, 70, 1545ー1551)に誤りがあることを見出し、その訂正をするとともに、本骨格のもつ特異な立体化学を明らかにした(J. Org. Chem., 2016, 81, 3136&ー3148)。(2)については、(1)および前年度に明らかにしたN-ベンゾイル-1,5-ベンゾチアジンおよびそのS-オキシド誘導体のバソプレシン受容体拮抗作用(J. Med. Chem., 2015, 58, 3268ー3273)の継続として、N-ベンゾイル-5-ヒドロキシ-1-ベンゾアゼピン類を合成し、バソプレシン受容体拮抗作用を調べ、活性発現に寄与する立体化学を明らかにした(論文投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の成果は、今後の創薬研究に役立つ医薬品化学のみでなく、基礎的な有機化学の観点からも有用な知見を得ている。成果については、著明な論文誌(J. Org. Chem.)で公表するとともに、これまでの成果もまとめて総合論文(有機合成化学協会誌)として公表し、社会へ還元している。関連学会(メディシナルケミストリーシンポジウム、反応と合成の進歩シンポジウム、有機合成化学協会関東支部シンポジウム、有機合成化学協会新潟シンポジウム、日本本薬学会年会など)でも多数口頭発表やポスター発表を行っている。 なお、実験上の都合(例、化合物の合成に研究計画で想定した以上の時間を要してしまった)から、1年間、本研究課題を継続していただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題(軸不斉)は、最近の創薬研究の現場でも開発ステージに上げる際に、一つの留意点として考えられており、本研究は特に企業研究者には関心を持たれていると思われる。また、化合物の立体化学を多面的に考えると、意外なところに不斉(キラリティー)があることを考えさせられ、基礎研究としても価値が高い。特に、ベンゼン環縮合含窒素7員環構造は、医薬品の基本骨格として有用性が高いので、基本的にはこの研究方針を継続する。
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Causes of Carryover |
化合物の合成に研究計画で想定した以上の時間を要してしまったこと、および、合成化合物の生物活性評価試験(外部試験受託機関に依頼)にも時間を要してしまったことから、1年間、本研究課題を継続していただいた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
化合物合成用の消耗品購入、生物活性評価試験費用、論文投稿や研究発表関係費用、各種情報収集(学会参加など)費用などに使用する予定。
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