2013 Fiscal Year Research-status Report
多機能性酵素プラスミンに対する活性中心志向型阻害剤の分子設計
Project/Area Number |
25460164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
津田 裕子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (10098478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プラスミン / 阻害剤 / P2残基 / 酵素選択性 |
Research Abstract |
プラスミン(PL)は血栓除去に関わる線溶系の主要因子であり、血管内外に形成されたフィブリン塊を分解して血栓を除去する。PLはフィブリン塊以外のタンパク質、たとえばフィブロネクチン、ラミニンなど細胞外基質を分解し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の活性化に寄与することも知られている。よってPLは、出血性疾患のみならず、炎症や、癌の増殖や転移などの病態においても重要な役割を果していることが示唆されている。従って特異的PL阻害剤は、これら病態におけるPLの役割の解明や、病態の改善に有用であると考えられる。小分子PL阻害剤としては、トラネキサム酸(Tra)やTra の誘導体であるYO-2が知られている。PLとYO-2の複合体の構造を計算化学的手法により解析したところ、Traのアミノ基はS1ポケットと、Tyr(OPic)はS2 siteと、さらにオクチルアミド(OA)分子は疎水性に富んだS1’ siteと相互作用していることが明らかになった。 本年度の研究では、PLのS2 siteがウロキナーゼなど他のセリン酵素と比較して広く拡がっているのに注目した。すなわち、P2残基Tyrの水酸基にピコリル基より大きい分子を導入するとPLは許容できるが、一方ウロキナーゼは許容できないため、結果としてPLに選択性的な阻害剤が得られると推測し合成を実施した。 合成した化合物の中で、ピリジン環をキノリン環に置換した化合物1が最も強いPL阻害活性を示した(IC50 = 0.22 microM)。化合物1は、YO-2 (IC50 = 0.53 microM)より2.4倍強力にPLを阻害し、ウロキナーゼとの選択性は35倍向上した。これによりP2残基の伸長は阻害活性と選択性の向上に有用であることが示された。構造活性相関研究により以下のことが明らかになった:1)水酸基の伸長に用いる残渣は芳香族が好ましく;2)その芳香環の伸長に用いる残基は芳香族でも脂肪族でもよく;3)伸長する方向はo位よりm-またはp-位が好ましい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YO-2の構造をもとにして、年次P1、P2ならびにP’1残基の構造変換を行い、活性と選択性の向上を目指すことを計画した。本年度はそのうちP2残基の構造変換を行い良好な結果を得たので、概ね計画通りに進展していると判断している。 即ちYO-2のTyr(OPic)はS2を占有している。P2残基をTyrとするとPL阻害活性は大きく低下した(化合物2:IC50 = 67 microM)。Tyrの水酸基をベンジル基、t-ブチル基で修飾するとPL阻害活性は向上し、IC50 = 1.7 microM, 17 microMを示し(化合物3,4)、水酸基の伸長に用いる残渣は芳香族が好ましかった。水酸基をナフチル基で修飾した化合物5はIC50 = 0.71 microMでPLを阻害し、1と比較して窒素原子が有効であることが示された。水酸基上に伸長された芳香環にさらに芳香環を伸ばすと阻害活性は向上したが(化合物1,5)、脂肪族(-CF3)で伸長しても阻害活性は改善された(化合物6:IC50 = 3.0 microM、化合物7:IC50 = 0.60 microM、化合物8:IC50 = 0.96 microM)。伸長する方向はo位(6)よりm-またはp-位(7,8)が好ましかった。計算化学で検討すると、1はYO-2と同様にS2部位を占有しており、疎水性の広がりにより疎水性相互作用が強化されてPL阻害活性が改善されたと推測された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)分子設計と合成、酵素阻害活性の評価:P1ならびにP’1残基の構造変換を試み、酵素阻害活性の評価を行う。まずP1残基の塩基性基の最適化を行う。次に非塩基性P1残基の検討を行う。塩基性残基は膜透過性を低下させ、経口投与時の生物学的利用率を低下させる要因の一つである。塩基性基の静電気的相互作用にたよらず、π-ハロゲン相互作用等でS1ポケットとの相互作用を保持できれば、脂溶性が向上し経口投与が可能となることが期待できる。 P’1残基については、アルキル直鎖(オクチル)に酸素を導入し、酸素の導入位置を変換する。さらにアミド結合をエステル結合に変換する。 2)YO-2の病態マウスにおける評価:急性GVHD病態マウスおよびエンドトキシンで炎症を惹起した病態マウスにおいて、YO-2がMMPsの活性化及びサイトカインの遊離を抑制できるか否か評価する。確立した評価系で、新規PL阻害剤の病態マウスにおける評価を実施する。
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Research Products
(7 results)