2014 Fiscal Year Research-status Report
多機能性酵素プラスミンに対する活性中心志向型阻害剤の分子設計
Project/Area Number |
25460164
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
津田 裕子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (10098478)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 興士 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30445960)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | プラスミン / 阻害剤 / P1’ 残基 / 炎症性疾患治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスミン(PL)は血栓除去に関わる線溶系の主要因子として知られている。近年我々は、出血性疾患のみならず、炎症や癌の増殖や転移などの病態におけるPLの役割に注目ている。すなわち、PL阻害剤を設計・合成して、得られた阻害剤を使用して病態時のPLの役割を解明し、臨床利用へ応用することを目指している。 この観点から、東京大学医科学研究所・服部准教授との共同研究をすすめ、急性移植片対宿主疾患(GVHD)モデルマウス【Sato, et al., Leukemia (2015) 】や潰瘍性大腸炎モデルマウスにおけるPL阻害剤の効果を検討した【Munakata, et al., Gastroenterology (2015生存率または病態の改善が見られ、特異的PL阻害剤は上記病態におけるPLの役割の解明や、病態の改善に有用であることを示すことができた。 上記実験ではPL阻害剤として以前我々が開発したYO-2を使用した。本年は、阻害活性と溶解性を改善することを目的として、YO-2分子中のオクチルアミド(OA)分子のアルキル直鎖(オクチル)に酸素を導入し、酸素の導入位置を変換した。さらにアミド結合をエステル結合に変換した。これら変換により溶解性は改善されたが、阻害活性は低下し、YO-2より強い阻害活性を示す化合物は得られなかった【Tsuda, et al, Peptide Science 2014 (2015)】。次に、アルキル直鎖(オクチル)をさらに伸張し、その先端にTyr, Lys, Alaを結合した化合物群を合成した。アルキル基を伸ばすと阻害効果が上昇し、21原子数まで伸ばし、その先端にTyrを結合した化合物は、YO-2より強いPL阻害活性(IC50 = 0.19 μM)を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず新規化合物の合成については、YO-2の構造をもとにしてP1’残基の構造変換を行い、YO-2より強いPL阻害活性(IC50 = 0.19 μM)を示す化合物を得た。従来から疎水性に富んだS1’ siteと相互作用しているとされていたアルキル直鎖(オクチル)をさらに伸張し、または短縮し、疎水性相互作用の寄与を検討したばかりでなく、その先端にπ-π相互作用または静電気相互作用できる残渣を配して、相互作用点を増やすことを意図したものである。 阻害剤を使用した病態時のPLの役割の解明や、臨床利用へ応用する点については、急性移植片対宿主疾患(GVHD)モデルマウスや潰瘍性大腸炎モデルマウスを使用し、PL阻害剤が病態を改善することを示すことができた。PL阻害剤の腹腔内投与により好中球やマクロファージが減少すること、炎症性サイトカインやケモカインが減少することを示し、PLと炎症性疾患の関わり合いも明らかとなりつつある。 さらに、オーストラリアのグループとの共同研究によりミニプラスミンとPL阻害剤のX-線構造解析がすすんでおり、それに基づく新しい分子設計も可能である。 以上より、概ね計画通りに進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)P1、P1’残基の構造変換を試みる: P1残基の塩基性基のために膜透過性が低下し、経口投与は困難である。塩基性基の静電気的相互作用をπ-ハロゲン相互作用等で代替し、脂溶性の向上を図る。P1’残基については、アルキル直鎖(オクチル)をFactor XIaで報告されたヘテロ環に変換することを試みる。 2)PL阻害剤の前臨床実験を実施する。すなわち、YO-2を腹腔内投与し、極量投与、肝排泄、腎排泄の検討を行う。次に、潰瘍性大腸炎モデルマウスにYO-2を腹腔内投与し、炎症性疾患におけるPLの関与を検討する。YO-2より優れたPL阻害剤が得られたら、同様の実験を実施する。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Inhibition of plasmin attenuates murine acute graft-versus-host disease mortality by suppressing the matrix metalloproteinase-9-dependent inflammatory cytokine storm and effector cell trafficking2015
Author(s)
Sato A, Nishida C, Sato-Kusubata K, Ishihara M, Tashiro Y, Gritli I, Shimazu H, Munakata S, Yagita H, Okumura K, Tsuda Y, Okada Y, Tojo A, Nakauchi H, Takahashi S, Heissig B, Hattori K.
-
Journal Title
Leukemia
Volume: 29
Pages: 145-156
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Inhibition of Plasmin Protects Against Colitis in Mice by Suppressing Matrix Metalloproteinase 9-Mediated Cytokine Release From Myeloid Cells2015
Author(s)
Munakata S, Tashiro Y, Nishida C, Sato A, Komiyama H, Shimazu H, Dhahri D, Salama Y, Eiamboonsert S, Takeda K, Yagita H, Tsuda Y, Okada Y, Nakauchi H, Sakamoto K, Heissig B, Hattori K.
-
Journal Title
Gastroenterology
Volume: 148
Pages: 564-578
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-