2013 Fiscal Year Research-status Report
医薬品による発がんリスク増加に関わる輸送担体の探索とその評価系の開発
Project/Area Number |
25460169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
関本 征史 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (10381732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学発がん / イニシエーション / 芳香族炭化水素 / 遺伝毒性 / トランスポーター / CYP1酵素 |
Research Abstract |
本研究では、「発がん修飾物質」の作用点として、特にイニシエーション過程における増強作用に着目し、「発がん修飾物質」の「発がん性物質の細胞内動態に及ぼす修飾作用」という観点から解析を試みる。初年度は、発がん修飾物質の標的分子の候補として肝異物排出トランスポーター(P-gp、Mrp2およびBCRP)に着目し、これらの機能的阻害、あるいは発現阻害が及ぼす影響を、発がん性芳香族炭化水素化合物(3-メチルコランスレン: MC)に対する応答性の変化を指標として解析した。 まず、HepG2細胞に対して上記トランスポーターの特異的阻害剤とMCを複合処理し、MCの細胞内濃度、芳香族炭化水素受容体(AhR)活性化作用、および芳香族炭化水素の活性化酵素遺伝子(CYP1A1)の誘導に及ぼす影響を評価した。いずれの阻害剤を処理した場合にも細胞内MC量およびAhR活性化能の増加が見られたが、その程度はBCRP阻害剤の作用が最も大きかった。また、BCRP阻害剤存在下、MCによるCYP1A1遺伝子の誘導が著しく増強された。 さらに、上記肝異物排出トランスポーターの発現阻害(siRNA処理)による影響についても解析を試みた。しかし、siRNAによりある種のトランスポーターの発現を阻害した場合、他のトランスポーターの発現が増加するといった、非特異的な影響が見られ、その影響を明確にすることが残念ながらできなかった。 以上、初年度の実験から、発がん性芳香族炭化水素化合物(MC)の細胞内濃度維持に肝異物排出トランスポーターの一種であるBCRPが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実験計画では、「発がん性物質の細胞内取込み・排泄に関わる輸送担体の探索」「輸送担体の機能阻害(または発現低下)に伴った発がんイニシエーション作用の増強における実験的検証」を予定し、これに基づいて検討を行った。前項については、少なくともトランスポーターの阻害剤を用いた検討から、発がん性芳香族炭化水素化合物の細胞外排泄に関わる輸送担体の候補としてBCRPを同定することができた。また、次項についても、BCRP阻害剤と発がん性芳香族炭化水素化合物の複合曝露により、DNA付加体形成、あるいは実際の変異の誘発などは確認できていないが、イニシエーション作用発現に重要と考えられるAhR活性化や代謝活性化酵素(CYP1A1)の誘導を確認することができた。これらの点から、本研究は概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に計画した、「発がん性物質の細胞内取込み・排泄に関わる輸送担体の探索」「輸送担体の機能阻害(または発現低下)に伴った発がんイニシエーション作用の増強における実験的検証」で達成できていない、発現阻害系の確立ならびに遺伝子傷害性の確認、についてまず検討を進める。具体的には、siRNA処理による発現阻害系が上手く機能していなかったことから、遺伝子ノックダウンによるトランスポーター欠損細胞の樹立を試み、これを用いて解析する。 また、次年度以降に計画している、「発がん性物質のin vivo 体内動態を模倣した新規モデル細胞実験系の構築」についても検討を進める。具体的には、モデル化合物(医薬品と発がん前駆物質)をヒト小腸細胞(Caco-2 など)と標的臓器の細胞(HepG2 など)からなる重層モデル細胞系に複合曝露し、上層・下層の両細胞に対する毒性を遺伝子発現誘導(異物代謝酵素遺伝子、DNA 傷害応答遺伝子)、DNA付加体形成などを指標として評価することで、細胞レベルではなく、個体レベルでの医薬品-発がん前駆物質相互作用の可能性を追求する。
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