2014 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスNS1蛋白の選択的変異誘導による病原性減弱機序の解明
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25460206
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
林 京子 中部大学, 生命健康科学研究所, 研究員 (60110623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 貞範 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (40332655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / スフィドロフラン誘導体 / 変異ウイルス / 病原性 / NS1 蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. In vitroで誘導したスフィドロフラン誘導体耐性インフルエンザウイルスの特性の解析 スフィドロフラン誘導体 (1R,2R)-1-(5'-methylfur-3-yl)propane-1,2,3-triol(MFPT) 存在下でインフルエンザウイルス(A/NWS/33、H1N1亜型)を増殖させることによって、細胞及び動物体内での増殖能が低下した変異ウイルスを得た。遺伝子解析の結果、ウイルス非構造蛋白 NS1 の遺伝子にC490U (NS1蛋白のP164S)という新規の変異が生じていた。この変異は、NS1 蛋白の作用標的の1つであるphosphatidylinositol 3-kinase/Akt シグナル経路においてAkt のリン酸化能を抑制していた。このことから、アポトーシス進行にとって重要な役割を果たすPARP-1及びcaspase-3 の解裂を阻止する結果をもたらすと推測された。さらに、野生株感染細胞ではヌクレオプロテイン(NP) の核外移送が見られたが、MFPT耐性ウイルスではNP が核内に留まっていた。また、MFPT耐性ウイルス感染細胞ではインターフェロンベータ転写物の発現量が著しく減少していた。これらの結果から、MFPT 耐性ウイルスのNS1 P164S変異は、NS1 のアポトーシス誘導機能を調節する重要な役割を果たし、結果的にインフルエンザウイルスの弱毒化をもたらしたと考えられる。 2. 他のインフルエンザウイルス株におけるMFPT耐性ウイルスの解析 A型インフルエンザウイルスのH3N2亜型及びB型インフルエンザウイルスについて、同様にMFPT存在下で10代継代培養して耐性ウイルスを得た。これらの耐性ウイルスについて遺伝子解析を行っていて、現時点ではNS1には機能的に重要な遺伝子変異が確認されておらず、他の遺伝子についても検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、MFPT 耐性インフルエンザウイルスが病原性を変化させるメカニズムの解明を主たる課題としてきた。その結果、NS1 蛋白の新規の変異であるP164S が、アポトーシス誘導において重要な調節機能を果たす経路に関与することを明らかにすることができた。このようなP164S 変異株の作用が病原性減弱に寄与することを矛盾なく説明できると考えられる。また、他のインフルエンザウイルス株についても、MFPT耐性ウイルスを得ることができ、遺伝子解析を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
MFPT が他のインフルエンザウイルス株に対しても、これまでに使用してきたH1N1亜型ウイルスと同様の変異を誘導するのかを、遺伝子解析によって検討する。ウイルス増殖に重大な影響を及ぼすと考えられる変異が見出された場合には、生体レベル及び細胞レベルでのウイルス増殖能との関連性を解明する。また、MFPT は、インフルエンザウイルスだけでなく、単純ヘルペスウイルスに対しても培養細胞での増殖阻害効果を有することが既に明らかになっていることから、単純ヘルペスウイルス感染動物体内における増殖阻害効果を検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品の値引きが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子解析用消耗品の購入に充当する。
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