2014 Fiscal Year Research-status Report
CYP2D6遺伝子多型別トラマドール光学異性体血中濃度推移と効果に関する研究
Project/Area Number |
25460213
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
須野 学 岡山大学, 医療教育統合開発センタ-, 准教授 (20621189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永坂 岳司 岡山大学, 大学病院, 講師 (30452569)
北村 佳久 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40423339)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トラマドール / 光学異性体 / LC-MSMS / 遺伝子多型 / CYP2D6 |
Outline of Annual Research Achievements |
トラマドール(TR)は紫外線により分解し,その光分解は1次反応に従うことが報告されている.太陽光に含まれる紫外線は,波長域315-380 nmの長波長紫外線 (UV-A) , 波長域280-315 nmの中波長紫外線 (UV-B) , 波長域100-280 nmの短波長紫外線 (UV-C) に大別される.TR液剤の光による分解に関しては,いまだ十分に検討されておらず,その光分解特性を分析し,臨床現場におけるTR液剤の光安定性を評価することは重要である.本研究では水溶液中TRの光分解特性を調査するために,TR液剤にUV-A, UV-BおよびUV-C照射を行い,TR液剤中(±)-TRの光分解挙動をそれぞれの波長において比較した.さらに,TR液剤が臨床現場で光に対して安定かどうかを評価するため,臨床現場を想定した保管条件のもとTR液剤光安定性実験を行った.UV-A,B,C照射におけるTR光学異性体の分解に差異は認めなかった.また,UV-AおよびUV-B照射では分解はほとんど認めず,TRは水溶液化しても臨床上,使用できることを明らかにした. TR は鎮痛効果に個人差があることが臨床上問題となっている.TRはラセミ体であり,μオピオイド受容体への結合だけでなく,それぞれの光学異性体が異なる作用機序を持つこと,TRの代謝は薬物代謝酵素CYP2D6の影響されることが主要因と考えられる.TRを投与している患者を対象にTR服用後に経時的に血中濃度を測定したところ,CYP2D6 遺伝子多型別に異なるpharmcokineticパラメーターを認めた.すなわち,CYP2D6*1*4およびCYP2D6*10*10はその野生型に対しTRのAUCおよびトラフ血球濃度が高くなっていることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水溶液中トラマドールの光分解特性を調査するために,トラマドール水溶液にUV-A, UV-BおよびUV-C照射を行い,水溶液中(±)-トラマドールの光分解挙動をそれぞれの波長において比較した.さらに,TR液剤が臨床現場で光に対して安定かどうかを評価するため,臨床現場を想定した保管条件のもとTR液剤光安定性実験を行った.UV-A,B,C照射におけるTR光学異性体の分解に差異は認めなかった.また,UV-AおよびUV-B照射では分解はほとんど認めず,TRは水溶液化しても臨床上,使用できることを明らかにした.また,これらの内容は論文化した. トラマドールを投与している患者を対象に,トラマドール服用後に経時的に血中濃度を測定したところ,CYP2D6 遺伝子多型別に異なるpharmcokineticパラメーターを認めた.すなわち,CYP2D6*1*4およびCYP2D6*10*10はその野生型に対しトラマドールのAUCおよびトラフ血球濃度が高くなっていることを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き臨床医と連携し,患者データの積み重ねをしていく.加えて,CYP2D6遺伝子多型別にトラマドール血中濃度と鎮痛効果および有害事象として頭痛および嘔気の発生頻度を調査する予定である. 今年度は11月に開催される医療薬学会に成果発表を予定している.
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