2013 Fiscal Year Research-status Report
体内時計システムを利用した新規抗うつ薬創薬ターゲットの探索
Project/Area Number |
25460221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
牛島 健太郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (70448843)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生体リズム / 薬物有害反応 / 時計遺伝子 |
Research Abstract |
うつ病の誘発が指摘されている薬物を実験動物に投与し、行動学的変化を観察した。抗うつ薬のスクリーニングに汎用される強制水泳試験を行ったところ、インターフェロン-αはマウスの無動時間を有意に増加させた一方、メフロキン(抗マラリア薬)およびトピラマート(抗てんかん薬)は無動時間を有意に短縮させた。今回使用した薬物は、いずれもうつ病の誘発が臨床上指摘されている薬物であるが、強制水泳試験での成績は一貫したものではなかった。 近年の時間生物学研究により、体内時計は精神疾患の発症に関与することを示唆する知見が蓄積されている。そこでうつ病のバイオマーカーとなる因子を探索することを目的に、体内時計中枢である視交叉上核における時計遺伝子発現リズムを測定した。インターフェロン-αにより、NPAS2 mRNA発現リズムの位相が12時間前進し、明期に発現量のピークを認めた。さらに、明期におけるPer1およびNr1d1 mRNAの発現量がインターフェロン-αにより増加した。他の時計遺伝子(Per2, Per3, Bmal1, Clock, Cry1およびRORα)の発現リズムや発現量には、インターフェロン-αを投与しても著明な変化は認めなかった。 NPAS2とBmal1のヘテロダイマーは、遺伝子発現調節領域のE-boxに作用して転写活性を促進することが知られており、Per1およびNr1d1遺伝子の上流にはE-boxが存在している。インターフェロン-αによるPer1およびNr1d1 mRNA発現量の増加は、NPAS2のリズム位相変化を介している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではまず、臨床上うつ病の誘発が指摘されている3つの薬物を用いて強制水泳試験を行ったが、インターフェロン-αと他の2薬(メフロキンおよびトピラマート)で正反対の結果であった。予想に反した成績が得られたため、実験に使用した薬物投与量が臨床用量と大きく解離していないことを文献的に確認し、実験の再現性を確認する必要があった。 また、これまでの基礎研究の成績より、インターフェロン-αは視交叉上核のPer2 mRNA発現リズムを破綻させると予想していた。しかし、本研究においてインターフェロン-αはPer2遺伝子の発現リズム位相および発現量に影響しなかった。そこで、Per2遺伝子以外の時計遺伝子発現リズムを測定する必要があると考え、多くの時計遺伝子を対象にその mRNA発現量を測定する必要があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、視交叉上核以外の部位(海馬や前頭皮質)における各時計遺伝子発現リズムを測定する。インターフェロン-αによるNPAS2遺伝子発現のリズム位相前進が、海馬や前頭皮質においても認められるか否か明らかにする。続いて、強制水泳試験で無動時間を短縮させた薬物(メフロキンおよびトピラマート)を用いて、視交叉上核、海馬および前頭皮質における各時計遺伝子発現リズムを測定する。これらの検討により、薬物誘発性うつ病のバイオマーカーとなる因子を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は3つの薬物を使用して薬物有害反応を評価する計画であったが、予想外の結果が得られたために平成25年度では1種類の薬物について検討を行ったのみであった。薬物および実験動物購入費が大幅に減少したために、次年度使用額が生じた。 平成25年度に実施予定であった他の2つの薬物を用いた検討を、平成26年度に繰り越して実施する予定である。当初の研究計画に沿って実験を遂行していく。
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