2014 Fiscal Year Research-status Report
医療情報データベースを用いた免疫関連バイオ医薬品と化学薬品間の相互作用評価
Project/Area Number |
25460239
|
Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
佐井 君江 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (20195960)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 純一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (50272539)
堀 雄史 浜松医科大学, 医学部附属病院, 副薬剤部長 (20436786)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 医療情報データベース / 薬物間相互作用 / 免疫バイオ医薬品 / スタチン |
Outline of Annual Research Achievements |
(目的)本研究では、免疫関連バイオ医薬品(薬剤A)と化学薬品(薬剤B)との薬物相互作用の有無及び程度を明らかとするため、医療情報データベースを用いた新たな薬剤疫学的評価方法を確立し、これを用いて相互作用を受ける薬剤プロファイルを作成することを目的とする。 (方法)本年度は、薬剤[A]として、CYP3A4等の発現低下に関わるIL-6受容体に対する抗体医薬品トシリズマブを用い、薬剤[B]として、CYP3A4の代謝を受けるアトルバスタチン[B1]と、同酵素代謝を受けないプラバスタチン及びロスバスタチン[B2]を対象とした。浜松医大病院ならびに研究用医療情報データベースにて、昨年度構築した評価手法にて、薬剤[A]追加による[B]の薬効、処方量、及び副作用指標への影響を解析した。 (結果)薬剤[A]単独で、処方2ヵ月後の血清総コレステロール(T-Cho)及びトリグリセライド(TG)は1.2~1.4倍に上昇し、薬剤[B]処方後の[A]追加例でもT-Choは同程度に、TGは[B1]と[B2]で経過が異なるが1.2倍及び1.7倍に上昇した。腎機能(BUN)については、薬剤[A]単独及び[B]への追加例でほぼ変動は無く、肝機能指標(sALT)は薬剤[A]単独で2.1倍に、[B1]及び[B2]への追加処方例では2.1倍及び1.9倍に上昇した。筋障害指標(CK)は薬剤[A]単独で1.5倍に、薬剤[B1]への追加例では1.9倍、[B2]では1.1倍の変動であった。 (まとめ)異なるCYP3A代謝を受ける薬剤[B1, B2]について、これらの有効性及び肝腎機能に対する薬剤[A]の影響を解析した結果、何れの指標も[A]単独による変動とほぼ同程度であり、実臨床下での影響は無視できる程度と考えられた。一方、筋障害指標(CK)等では、[B1]と[B2]で変動パターンが異なる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、薬剤[A]単独の各種臨床指標(副作用指標)のプロファイルを明らかとしながら、昨年度構築した薬物間相互作用の評価手法を用いて、異なるCYP3A4代謝を受ける薬剤[B1, B2]を対象に、これらの有効性とともに副作用指標に対する薬剤[A]併用の影響評価を検討し、その実行性が示された。なお、今回の併用症例数も非常に少ないことから、今回の結果は予備的知見にとどまるものであるが、代謝プロファイルの異なる薬剤[B]の間で、影響に違いのある可能性が見い出されたことは、次年度の研究デザイン構築の上でも有意義なものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き浜松医大ならびに研究用医療情報データベースを用い、薬剤[B]としては、CYP3A4代謝を受けるスタチン製剤[B1(アトルバスタチン)]及び受けないスタチン製剤[B2(プラバスタチン、ロスバスタチン等)]を対象とし、薬剤[A]として、CYP3A4やMRP2等の発現低下をもたらすことが示唆されているTNF-αまたはTNF受容体に対する抗体医薬品(TNF-α阻害薬)等を用い、薬剤[A]併用による薬剤[B]の有効性・副作用指標への影響を評価する。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた学会参加等が変更となり、旅費の支出額が減ったこと、また予定していた物品購入費用が予定より低価となったことから、残額は次年度の調査研究費に使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、成果発表のための学会参加や出張旅費への支出、解析対象の薬剤を拡張することから、関連の学術調査ならびにデータ処理作業のための人件費に使用する予定である。
|