2013 Fiscal Year Research-status Report
鼻中隔など顔面正中部骨格の形成過程で働く分子群の解析
Project/Area Number |
25460254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
和田 直之 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (50267449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 頭顔面発生 / 神経堤細胞 / 軟骨分化 / 鼻中隔 / レクチン |
Research Abstract |
鼻中隔など顔面正中部を構成する骨格は顔面の形態に大きく影響し,また頭蓋底の前端として大脳を支えるなど重要な働きを持つ。正中部骨格は,左右一対の梁軟骨とそれらに挟まれた中隔軟骨を原基とし,両者が融合してできる。本研究は,ニワトリ胚頭部形成時に中隔軟骨原基で強く発現するPNAレクチン結合糖鎖分子(PNA-BM)に注目して解析している。本年度は,①PNA-BMの分子実体の解明を進める,②頭部軟骨形成過程でのPNA-BMの発現制御機構について調べる,の2つの実験を行った。 ①PNA-BMの分子実体の解明:PNA-BMの分子性状を明らかにするため,レクチンブロットにより分子量を推定することを試みた。孵卵5日のニワトリ胚頭蓋底形成部位を切り出し,ここから膜タンパク質および細胞間物質を抽出してブロッティングを行った。残念ながら,現段階ではPNA結合性蛋白質を検出できておらず,手法の見直しを考えている。 ②正中部骨格形成に伴うPNA-BMの発現制御機構:PNA-BM発現領域は,眼胞前方を移動する神経堤細胞群(眼上神経堤)の分布領域とよく一致する。PNA-BM発現細胞の起源を調べるため,胚操作の手法を用いて眼上神経堤細胞を除去して発生させた。その結果,形成された軟骨ではPNA-BMの発現を確認できず,PNA-BMは眼上神経堤細胞と関連することが考えられた。次に,PNA-BMの発現調節に関わる分子としてSonic hedgehog (Shh)に注目した。Shh経路阻害胚では顔面~頭蓋底正中部が低形成となることから,Shhシグナル経路を阻害してPNA-BM発現を調べたところ,形成された軟骨内ではPNA-BMの発現は確認できなかった。以上から,正常発生時にPNA-BMを発現しているのは眼上神経堤細胞の子孫細胞で,その形態形成はShhにより制御されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時,初年度に計画していた実験は,①PNA-BMの分子実体の解明,②頭部軟骨形成過程でのPNA-BMの発現制御機構,の2つである。 このうち②についてはおおむね順調である。「研究実績の概要」でも述べたように,PNA-BMを強く発現する細胞の発生起源を明らかにできた。この細胞群は頭部のうち顔正面から口腔天井正中部およびラトケ嚢にかけて多く分布するので,この領域で発現が確認されている分子としてShhに注目して解析し,PNA-BMの発現や発現する細胞の軟骨分化はShhにより正に制御されることを明らかにした。頭部形成におけるShhの重要性はよく知られているが,今回の結果はShhが顔面正中部骨格のうち,特定の細胞群の分化に優位に関与することを示唆した新奇な結果と言える。 一方,①については必ずしも計画通りではない。遅れの原因となる作業工程として,ニワトリ孵卵5日胚の頭蓋底形成細胞からPNA-BMを含む糖タンパク質画分(膜タンパク質および細胞間物質を予想)を抽出する過程が挙げられる。抽出方法の問題点から,分子量を推定するためのレクチンブロットに十分な量のPNA-BMを確保出来ていない。この点を克服するため,抽出方法やブロッティングに関わる手法の見直しを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のように進める計画である ①PNA-BMの分子実体の解明:本実験については,上述のようにPNA-BMを含む糖タンパク質画分(個々までの観察から膜タンパク質および細胞間物質を想定)の抽出の問題,および組織中に含まれるPNA-BMの割合が少ないなどの問題がある。これらの解決には,抽出に用いる組織片の量を増やすことと,あらかじめ糖タンパク質を粗精製する工程が必要と考えている。組織片の量の問題は材料として用いるニワトリ受精卵を増やすことで解消できる。もう一つの問題については,可溶化したタンパク質画分をPNA結合アフィニティーカラムを通すなどしてPNA結合性分子を濃縮することを計画している。 ②PNA-BMの発現調節に関わる組織間相互作用,分子機構の解析:本実験については,Shhシグナルの亢進や抑制を行うことを計画しており,頭蓋底原基軟骨形成におけるShhの役割を明らかにしたい。Shh以外のシグナル分子については,マウスやゼブラフィッシュの変異体解析によりWnt9a/9bの顔面形成への関与が示唆されていることを踏まえ,Wnt9の経路を中心に解析していく。 ③PNA-BMの発現を指標にした,鼻中隔形成を担う細胞で機能する分子群の探索:PNA-BMの発現から,頭蓋底形成領域の細胞の性質が不均一である可能性が考えられる。これまでの解析からPNA-BM陽性細胞および陰性細胞の分布領域は確認できているので,それぞれの領域の細胞で発現するmRNAを抽出し,マイクロアレイにより比較を行う。これにより,PNA-BM発現細胞で有意に発現する遺伝子(群)のクローニングおよび機能解析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画分のうち,旅費については学内別経費より支払いが可能だった部分についてはそちらを優先して使用したため,執行額が少なくなった。またその他経費分は,申請時はPNA-BMのアミノ酸配列決定のための受託解析として確保していたが,実験の進行の関係で使用しなかったことなどから,支払総額が当初計画より少額となったため。 本年度は,物品費のうち消耗品類の支払いが多くなると予想されるので,繰越額はこの費目にあてる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Distinct populations within Isl1 lineages contribute to appendicular and facial skeletogenesis through the β-catenin pathway2014
Author(s)
Akiyama, R., Kawakami, H., Taketo, M. M., Evans, S. M., Wada, N., Petryk. A., Kawakami, Y.
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Journal Title
Developmental Biology
Volume: 387
Pages: 37-48
DOI
Peer Reviewed
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