2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25460255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
友岡 康弘 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (10197949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 淳雅 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (00535809)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 卵管 / 子宮 / 膣 / マイクロアレイ / 運命決定因子 / 液性因子 / クローン性株細胞 |
Research Abstract |
本研究では、雌性生殖器官である卵管・子宮・膣原基における卵管分泌上皮・子宮上皮・膣上皮への誘導因子を同定することを目的としている。 発生期と成体マウスの卵管・子宮・膣におけるmRNA量をマイクロアレイにより網羅的に比較し、発生期にmRNA量が上昇している遺伝子を探索し候補遺伝子を発見した。卵管・子宮・膣の上皮・間充織組織を単離し、mRNAを抽出後、リアルタイムPCRによって候補遺伝子の発現分布を解析し、卵管分泌上皮を多く持つ卵管間充織・膣間充織に発現特異性がある液性因子に着目してスクリーニングを行い、候補遺伝子を絞りこんだ。 当研究室において、性質を維持したまま継代可能な卵管・子宮・膣原基由来の株細胞が作製されている。性質が維持されているため、クローン性の卵管分泌上皮を誘導する間充織細胞、膣上皮を誘導する間充織細胞、またそれらを誘導しない間充織細胞が存在する。絞り込まれた候補遺伝子を、これらの上皮の運命決定を誘導しない間充織細胞に強制発現させ、株細胞を得た。間質が卵管繊毛上皮の運命を誘導できるかを調べられる共培養系に改良を加え、未分化な上皮株細胞と候補遺伝子を強制発現させた間充織細胞を共培養したところ、卵管分泌上皮と膣上皮の運命決定を誘導していると考えられる因子をいくつか同定することができた。 一方、子宮間充織に特異的に発現し、機能していると考えられる液性因子の同定には至っていない。その理由の一つとして、子宮上皮細胞特異的に発現し、その上皮の特徴を表すマーカー遺伝子が存在しないことが挙げられる。現在は子宮上皮細胞のマーカー遺伝子を探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、発生期と成体マウスの卵管・子宮・膣におけるmRNA量をマイクロアレイにより網羅的に比較し、発生期にmRNA量が上昇している遺伝子を探索し候補遺伝子を発見すること。さらに、卵管間充織・子宮間充織・膣間充織に発現特異性がある液性因子に着目してスクリーニングを行い、候補遺伝子を絞むこと。それらの候補遺伝子を、誘導能を持たない間充織株細胞に強制発現させることであった。 卵管分泌上皮・膣上皮への運命決定因子の探索においては、これらの計画は順調に進行し、候補遺伝子を強制発現された間充織細胞と未分化な上皮株細胞との共培養系を改良し、その共培養系を利用することで、卵管分泌上皮・膣上皮の性質を表すマーカー遺伝子の発現を上昇させる、間充織由来の因子をいくつか発見することができた。これらの結果は、予想以上の進捗であると考えられる。 一方で、子宮上皮への運命決定因子の探索においては、マイクロアレイで得られた発生期の子宮に特異的に発現している遺伝子が少なく、またその多くは運命決定に関与するとは考えられる液性因子ではなかった。発生期の子宮間充織に特異的に発現している遺伝子も同定できていない。さらに、子宮上皮への運命決定因子の探索のために、誘導能を持つ子宮間充織細胞と未分化な上皮株細胞との共培養系の改良を行ったが、子宮上皮細胞特異的に発現し、その上皮の特徴を表すマーカー遺伝子が存在しないため、改良に成功したかがわからなかった。このように、根本から実験を考え直す必要性があり、子宮上皮への運命決定因子の探索は、遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
卵管分泌上皮・膣上皮の運命決定因子の探索においては、平成25年度に得られた結果を基にして、誘導候補遺伝子の機能解析を引き続き行う。誘導現象については、改良された共培養系を用いるだけでなく、腎皮膜下移植による同定も行う。上皮・間充織株細胞と原基間充織・上皮をはり合わせた再構築原基を腎臓皮膜下へ移植し2-4週間経過すると、各器官の形成が確認される (Cunha, 1976; Yamanouchi et al., 2010, Umezu et al., 2010)。候補遺伝子を強制発現された株細胞を用いて、再構築原基を作製・移植し、誘導の確認を検証し候補遺伝子の機能を明らかにする。誘導の確認は、組織学的およびマーカータンパク質の発現を用いた免疫組織化学による。 子宮上皮への運命決定因子の探索は、引き続き子宮間充織に発現している液性因子の探索を行う。我々の以前の研究より、卵管繊毛細胞を誘導する液性因子の同定に成功しており (Umezu et al., 2010)、膣上皮の分化に関わる液性因子はいくつか報告されている (Nakajima et al., 2011, 2012; Laronda et al., 2013)。これらの結果から、子宮上皮の運命を決定するのは、1) これらの因子が発現していないというネガティブな要因 2) 発生期または子宮特異的でない因子、という2つの可能性があると考え、より広く子宮上皮への運命決定因子を探索する。また、子宮上皮に特異的に発現するマーカー遺伝子の探索研究も行ったが、同定するには至らなかった。遺伝子発現のみならず、タンパク質発現にも着目し、子宮上皮の性質を表すマーカーを探索する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の使用額は計画通りの執行であったが、実価格との些少な差異が生じたため。 次年度に必要な試薬の購入代金の一部とする。
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