2014 Fiscal Year Research-status Report
血中から組織へのリンパ球移動を担う高内皮細静脈の形成調節シグナルの解明
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25460268
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早坂 晴子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70379246)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リンパ節 / 血管内皮細胞 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高内皮細静脈 (High endothelial venules: HEV) はリンパ節、小腸パイエル板にのみ存在する特殊な血管であり、リンパ球はHEVを介して二次免疫組織に動員される。HEV形成の分子メカニズムはこれまで不明であったが、私のこれまでの研究から、胎生期に発現する遺伝子XがHEV内皮細胞分化に関与する可能性が明らかになった。遺伝子Xのnull 変異マウスでは、吸乳不能、チアノーゼ、呼吸困難を呈し、生後24時間以内に致死となる事が報告されている。またこれまでの研究から、このマウスの生後1-2日目のリンパ節ではHEVマーカーであるMECA79抗原の発現が低下しており、HEV内皮細胞の分化成熟を調節する可能性が示唆された。本年度はHEV形成におけるこの転写因子の機能を明らかにするため、血管内皮細胞特異的に遺伝子Xを欠損するコンディショナルKOマウスを用いた解析を行った。遺伝子X/LoxPのfloxedマウスを作製し、血管内皮細胞特異的にCreを発現するTie2-Creマウス と交配した。その結果、ホモ欠失個体では遺伝子Xnull 欠損マウスと同様の表現型を示した。このことから遺伝子Xの欠損はHEVのみならず、他の血管機能不全を引き起こす可能性が考えられた。一方、遺伝子Xの過剰発現の影響を解析するため、遺伝子Xを恒常的に高発現するトランスジェニックマウスを作製し解析を行った。その結果、末梢リンパ節では通常未成熟HEVにのみ発現するMAdCAM-1分子が、トランスジェニックマウスでは生後4週以降においても持続する事が明らかになった。このことは遺伝子Xの過剰発現がHEV成熟過程に影響する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子Xノックアウトマウスについて:当初Tie2-Creマウスとの交配により血管特異的な遺伝子ノックアウトを予定していたが、致死という表現型をレスキューする事ができなかった。このため代替策としMx-Creマウスを用いて誘導的遺伝子ノックアウトを試みており、交配により既に個体を得ている。 遺伝子Xトランスジェニックマウスの表現型解析について:当初計画していたコンベンショナルプロモーターを用いた実験方法では個体が得られなかったが、ROSA26領域へのノックインマウスを作製することにより問題点が解決し、個体を得る事ができた。解析についても予定通り終了しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 血管特異的遺伝子Xノックアウトマウスが生後致死であったため、Mx-Creマウスを用いて誘導的ノックアウトマウスを作製し、解析を行う。 2.これまでの研究から、Nkx2.3が遺伝子Xの上流転写因子である可能性が考えられた。そこで遺伝子Xの転写プロモーターにNkx2.3分子が直接結合し、転写調節する可能性について、抗Nkx2.3抗体を用いたクロマチン免疫沈降を計画し、実際に計画通り実験をおこなった。しかし、複数の抗Nkx2.3抗体を用いた結果、どの抗体も特異的にNkx2.3分子を免疫沈降することができなかった。このためクロマチン免疫沈降でNkx2.3分子と遺伝子X転写調節領域の相互作用を解析すると考えられた。そこで代替策として、遺伝子Xのプロモーターをクローニングし、Nkx2.3発現誘導によるルシフェラーゼレポーターアッセイをおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
遺伝子組換えマウス表現型解析に先立ち遺伝子型解析に用いるPCR酵素などの消耗品を算出していたが、動物作出が予定より時間がかかったことで実際に遺伝子解析する個体数が少なく、予定より少量の酵素しかしようしなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子組換えマウスが得られたため、交配によりコロニーを拡大する。このため多数の動物を飼育するための費用として支出する。
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