2014 Fiscal Year Research-status Report
腎血圧調節機構における神経性および細胞性作用経路の解明
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25460278
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
前田 誠司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10309445)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腎臓 / 自律神経系 / ネフロン / 大内臓神経 / 交感神経幹 / 精巣神経 / 介在細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に開発した微小カプセル法を用い、ラット左側腎を支配する交感神経節が特定できたことから、さらに腎臓内に投射する神経細胞の神経節分布には序列性が存在するかを確認した。ラット左腎の腎上区域および腎下区域にそれぞれ逆行性トレーサーを注入して標識細胞の神経節分布を確認した。その結果、腎上区域注入群では腎上神経節に最も多く分布がみられ、腎下区域注入群では交感神経幹T13に最も多くみられた。また両区域に二重標識された細胞は観察されなかった。よって、腎投射神経と神経節間には区域対応傾向がみられることが示された。 腎神経の区域対応性が発生過程を反映する可能性を検討するため、同じ腹膜後器官として発生する精巣を神経投射モデルとして用いた。精巣は発生期から随伴する精巣動脈と、精巣下降後に進入する精管動脈の2系統の栄養動脈をもつ。これらに随伴する上精巣神経と下精巣神経を微小カプセル法を用いて特異的に標識したところ、上精巣神経は交感神経幹T13を主神経節としてもち、下精巣神経の細胞は骨盤神経節および交感神経幹L5-L6に局在することが分かった。このことは、上精巣神経が初期発生期の血管分布を反映していることを示唆する。よって腎臓においても区域動脈の発生と密接に関連する可能性が示された。 一方、腎ネフロンにおける自律神経の作用を検討するために、集合管上皮細胞モデルとしてM-1細胞における受容体発現を観察した。M-1細胞はAQP2よりもAQP6を優位に発現し、集合管介在細胞の形質を示した。M-1細胞には、ムスカリン受容体m1, m4,およびm5のmRNAが発現しており、アドレナリン受容体はa2およびb1サブタイプmRNAが確認された。腎組織においても、これらの発現が介在細胞にみられたことから、介在細胞による酸塩基平衡が自律神経系の調節を受ける可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の腎支配神経の主神経節における分布をもとに、腎臓の区域別のトポグラフィーを作成した。これにより、腎臓に投射する主神経節をターゲットに絞り込み、腎区域レベルまでその活動および機能を検討することができようになった。また、当初計画していた腎障害モデルラットについては、単純結紮法およびカテーテルを用いた虚血法が困難であることが明らかになったため、動脈クリッピング法を応用した虚血/再環流モデルを計画した。具体的には、腎動脈周囲の腎神経叢を傷害しないように動脈周囲膜を剥離し、微細シリコンループを装着して数日間養生後に虚血/再環流実験に用いる。この方法は通常のクリッピング法と異なり、腎神経を絞扼損傷しないため、虚血/再環流に伴う自律神経系の影響を調べるためのモデルとして使用できると判断した。 一方、腎ネフロンに発現する神経伝達物質受容体の動態については、集合管介在細胞がcholinergicおよびadrenergicな刺激の両方に受容体をもつことを示し、神経性調節の効果が水やイオンの排泄/再吸収のみならず酸塩基平衡にも及ぶことを明らかにした。 以上について、病態モデル動物の作成については、手法が変更されたため、使用動脈数や研究の進行に若干の遅れが生じたが、年度内の研究は概ね予定通り遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット腎臓を支配する交感神経の節後ニューロンの主神経節が特定することができたので、腎機能変化における主神経節ニューロンの動態を観察していく。腎機能障害モデルとして、腎虚血/再環流(I/R)モデルを使用する予定である。このモデルは腎血管の単純クリッピングモデルと異なり、腎神経を傷害せずに動脈血環流を阻害できる。虚血時間は1時間以内とし、再環流後24時間以内の経時的神経活動を追跡する。交感神経節細胞の性質変化を各種モノアミン合成酵素(THやDbH)について、定量的および定性的解析を行う。一方、trans-differentiationなどの質的変化が起こる可能性を考慮し、ChATなどのアセチルコリン関連因子の発現も合わせて観察していく。 また、I/R腎の内在細胞による神経伝達物質受容体の経時的な発現変化をqRT-PCR法などの定量的手法およびIn situハイブリダイゼーションや免疫組織化学などの定性的手法で観察する。特定遺伝子もしくはタンパク質に顕著な変化がみられるタイミングを決定し、その前後における遺伝子発現変移をDNAマイクロアレイ等で網羅的に比較する。鍵となる遺伝子およびその産物の発現制御について、虚血性および再環流性のいずれのショックが原因となるかを解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
一部の動物実験が次年度に引き継がれたことによる実験動物の使用数減や、病態モデル動物作成の変更などで本年度使用する金額に達しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実験が中途になった非神経性アセチルコリンとその受容体の検出を次年度に行う予定である。また、病態モデル動物を作成できたため、次年度は検体数を増やして研究を行う。
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Research Products
(6 results)