2014 Fiscal Year Research-status Report
心房負荷モデル動物を用いた肺静脈心筋細胞の電気的リモデリングに関する研究
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25460281
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
尾野 恭一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70185635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 繁啓 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10326671) [Withdrawn]
大場 貴喜 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80431625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心房細動 / 肺静脈 / 自動能 / イオンチャネル / Clチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、慢性の不整脈で最も頻度が多い心房細動は、加齢と共に罹患者が増加し、80歳以上では人口の9-14%にのぼるという。心房細動では,心房収縮の欠如,不適切な心室拍数による心機能低下や胸部症状が出現しうるだけでなく、動脈塞栓症のリスクが増大することから、その予防や治療が重要な臨床的課題となっている。心房細動を起こすのは、心房内を不規則に興奮が旋回するリエントリーと考えられているが、多くの心房細動は肺静脈を起源とした異常興奮が重要な役割を果たすことが示唆されている。申請者はこれまで、ラット肺静脈の心筋細胞が心房や心室の筋肉細胞とは異なり、ノルアドレナリン負荷により容易に自動能を獲得することを報告してきた。ノルアドレナリン誘発自動能は、筋小胞体からの周期的なCa放出に起因し、洞房結節の自動能とは異なるメカニズムで作動していることを示した。さらに、肺静脈心筋細胞には過分極で活性化されるClチャネルが存在することを電気生理学的実験により示してきた。 今年度は、ラット肺静脈心筋細胞の過分極活性化Cl電流の電気生理学的特性を定量化し、数理モデルに組み込んだシミュレーションを作成した。さらに、そのシミュレーションモデルを用いて肺静脈心筋細胞の自動能におけるCl電流の関与について検討した、その結果、Cl電流は活動電位再分極後より徐々に活性化し、次の活動電位発火直前に振幅が最大となることがわかった。このことから、Cl電流が肺静脈心筋細胞の自動能を促進していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新たに見つけたClチャネルの解析とシミュレーションに多くの時間を割いた。Clチャネルは心室筋や心房筋では記録されないことから、肺静脈心筋に特異的に発現しているイオン電流だと考えられる。本電流系と肺静脈心筋の自動能との関り合いを解明していくことが、「病態モデルにおけるイオンチャネル系のリモデリング」を解明していく上で重要と考えたからである。Clチャネルのシミュレーションに必要な定量的データの収集に多くの時間を割いたことで、数理モデルは完成したものの、モデル動物での検証は充分に行うことができなかった。 今後は、このCl電流に焦点を当て、モデル動物での肺静脈心筋の電気生理学的リモデリングの検証に全力を注ぎたい。正常モデルラットと急速ペーシング動物での自動能の発現率やCL電流の電流密度及びキネティクスの解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、急速ペーシングモデルラットにおいて肺静脈心筋の電気的リモデリングの有無を検証する。病態モデルラットにおける肺静脈の電気生理学的特性について、組織標本及び単離細胞を用いて解析する。具体的には下記の2項目について研究を進める。 ①過分極活性化Clチャネルの解析:本年度のシミュレーションから、Clチャネルが肺静脈心筋の自動能発生に関与していることが示された。モデル動物で電流密度や杵ティスクを測定し、対照との比較検討をおこなう。 ②ノルアドレナリン誘発自動能の解析:in vivoの実験では、急速ペーシングラットにおいては心房細動の誘発率が増加していることが示されており、肺静脈心筋の自動能が更新している可能性が高い。正常ラットにおいては自動能の出現率が 3 割程度であるが、モデルラットにおいてノルアドレナリン誘発自動能が促進されるか電気生理学的に検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、シミュレーションモデルの作成に思いの外時間を要してしまったことが最大の原因である。プログラミングに手間取り、膜電位固定実験結果をうまく再現する電流波形を得ることがなかなかできなかった。最終的に、電位依存性及び時間依存性のパラメータを手作業で少しずつ変えながら、ほぼ満足できるシミュレーションモデルを完成させるに至った。このため、モデル動物の作成実験を次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、モデル動物の作成とそれを用いた実験を予定しており、次年度使用額は本実験プロトコールの遂行に充てる。
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Research Products
(7 results)