2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚同時検出器細胞の樹状突起局所におけるシナプス統合様式の解明
Project/Area Number |
25460285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 玲 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70422970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 樹状突起 / 同時検出 / 聴覚 / 音源定位 |
Research Abstract |
本研究では左右の音入力の同時検出器として働くことで両耳間時差検出を行うトリ層状核(NL)神経細胞において、担当する音の周波数に応じて樹状突起の長さが異なることの意味を明らかにすることを目的とする。そのためには樹状突起局所へのシナプス入力を再現する事が必須であることから、まずcagedグルタミン酸を用いたレーザー刺激により樹状突起局所にグルタミン酸を投与する手法の確立を試みた。その過程において、興味深いことに樹状突起上でのグルタミン酸受容体分布が均一でない事が分かってきた。刺激効率の高い1光子レーザー刺激による解析を行ったところ、長い樹状突起を持つ低周波数領域の細胞(Low-CF細胞)においては樹状突起遠位端において大きな受容体電流が観察された。一方、他の周波数領域の細胞では惹起される電流は樹状突起上で均一だった。つまりLow-CF細胞においては樹状突起遠位部にグルタミン酸受容体が集中していると考えられる。しかしながら通常の1光子レーザーは深さ方向の刺激範囲が広くなることから、反応の大きさが樹状突起の分岐の程度に影響される可能性がある。そこで2光子レーザー刺激を用いて同様の実験を行ったところ、やはり受容体の分布は遠位部に多いことが確認できた。次にスクロースを添加した高浸透圧溶液を用いて、Low-CF細胞の樹状突起近位および遠位に分布するシナプス終末から自発的興奮性シナプス後電流(mEPSC)を選択的に誘発させたところ、mEPSCの振幅および時間経過は両者の間で均一であった。このことから単一シナプスにおける受容体密度やその特性は樹状突起上で均一であることが分かる。これらの結果から、NLのLow-CF細胞における興奮性シナプスは樹状突起の遠位に集中していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験手法を確立する段階で、当初は予想していなかったことであるが、Low-CF細胞の樹状突起においてシナプス入力の分布に偏りがあることが示唆された。今年度は電気生理学的手法を中心にその解析を行い、シナプス入力の樹状突起上での分布を明らかにすることができた。シナプス入力部位の解析についてはさらに解剖学的手法を用いて行う予定であり、すでに電子顕微鏡による画像の取得を行っている段階である。 次年度以降は実際にシナプス入力がどのように統合されていくのかを、局所刺激を有効に活用していくことで解析する予定であるが、これまでに得られたシナプス入力部位のデータを元にすることで効率的に実験が行えると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解剖学的手法も組み合わせる事で、実際のシナプス入力の分布を明らかにするとともに、それらがどのような形で細胞体に届くのかを詳細に解析する予定である。具体的には電子顕微鏡により樹状突起およびそれに付着するシナプス終末を三次元再構築し、樹状突起上でのシナプス密度を直接明らかにする。またcagedグルタミン酸刺激により樹状突起局所へのシナプス入力を再現し、樹状突起上での入力部位の違いにより細胞体へ届くシナプス電位がどのように変わるのかを詳細に解析する。この実験から樹状突起の伝達特性を明らかにするとともに、なぜ樹状突起の遠位部にシナプス入力が集中しているのかについても考察できる。またシナプス終末を電気的あるいは光学的に刺激する手法を確立することで、生理的なシナプス入力についても同様の解析を行う予定である。 さらにこれらの局所刺激法を組み合わせることで樹状突起上の二カ所を同時刺激し、刺激部位の組み合わせによるシナプス入力の足し合わせの違いを解析する。例えば近接した部位、同一の樹状突起の遠位と近位、同側の異なる樹状突起、対側の樹状突起のような組み合わせで刺激した場合に、細胞体で観察されるシナプス電位がどのように変化するかを観察する。さらに多点刺激で活動電位を発生させる事ができれば入力部位による同時検出精度の変化を直接調べる事ができる。最終的には、今回の実験で得られるシナプス入力部位および樹状突起の電気的性質の詳細な情報をもとにモデルを作成し、コンピューターシミュレーションを行う事で細胞全体が同時検出器としてどのように振る舞うかについて解析する。入力周波数を変えた時の同時検出精度の変化を解析する事で、特に入力周波数に対して樹状突起がどのように最適化されているのかを明らかにする予定である。
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Research Products
(5 results)