2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格制御の観点から難病疾患群に共通する病的シグナル伝達系を解明する
Project/Area Number |
25460290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岸 博子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40359899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加治屋 勝子 鹿児島大学, 農学部, 講師 (00379942)
小林 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80225515)
張 影 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10711260)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血管平滑筋 / 血管異常収縮 / 細胞骨格関連分子 / 細胞運動・遊走 / 病的シグナル伝達系 / 腫瘍細胞浸潤・転移 |
Research Abstract |
研究代表者らは、血管異常収縮の病的シグナル伝達系として、SPC/Fyn/Rhoキナーゼ系を発見し、更に、siRNAと機能プロテオミクスにより、複数の細胞骨格関連分子がこのシグナル伝達系に関与している事を見出した。本研究課題の目的は、細胞骨格構築制御の観点から、血管異常収縮と、細胞運動・細胞遊走が関与する疾患群(腫瘍細胞浸潤・転移、動脈硬化、新生内膜形成)の、病的シグナル伝達系間の関連を解明する事である。平成25年度の研究成果は下記の通りである。 【計画1. 細胞骨格関連分子群と、既知の血管平滑筋異常収縮シグナル分子との相互作用部位の決定】細胞骨格関連分子群のフラグメントを、組換えタンパク質として発現し、既知の異常収縮シグナル分子であるFynの全長の組換えタンパク質(非活性型、活性型)との相互作用を、分子間相互作用解析装置(研究室現有)で解析し、細胞骨格関連分子P1がそのN末端でFynと相互作用する事を明らかにした。 【計画2. 高感度タンデム型質量分析計による、異常収縮シグナル分子の新規翻訳後修飾の解析】ヒト血管平滑筋細胞にHaloTag-細胞骨格関連分子V1融合ベクターを導入し、SPCで刺激後、細胞骨格関連分子V1と結合したFynを、HaloTag プルダウンアッセイで精製する事に成功した。これをSDS-PAGEで分離して、翻訳後修飾によってシフトしたバンドを切り取り、質量分析用にサンプル調製した。 【計画3. 異常収縮シグナル分子が、細胞運動・細胞遊走に果たす役割の解析】細胞骨格関連分子群や、既知の異常収縮シグナル分子のsiRNAを、血管平滑筋細胞や腫瘍細胞に導入して当該分子をノックダウンし、ストレスファイバー形成や細胞運動・細胞遊走に対する影響を、免疫染色や、生細胞のタイムラプスで解析した。 【計画7. 生体レベルでの解析】平成27年度に予定した計画だが、前倒しで着手した。細胞骨格関連分子P1の平滑筋特異的なノックアウトマウスを委託作成し、順調に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定した研究計画のうち、【計画1. 細胞骨格関連分子群と、既知の血管平滑筋異常収縮シグナル分子との相互作用部位の決定】と、【計画3. 異常収縮シグナル分子が、細胞運動・細胞遊走に果たす役割の解析】は、計画通りに進行している。また、【計画2. 高感度タンデム型質量分析計による、異常収縮シグナル分子の新規翻訳後修飾の解析】は、質量分析計にサンプルを導入するためのnanoLCが故障したため、細胞骨格関連分子V1に結合したFynの精製と、質量分析用のサンプル調製をした段階で中断しているが、nanoLCの修理が完了次第、翻訳後修飾の種類と部位を解析できる。一方、当初平成27年度に予定していた【計画7. 生体レベルでの解析】では、平滑筋特異的な細胞骨格関連分子P1ノックアウトマウスの作成に、前倒しで着手する事ができた。以上の進捗状況を総合し、本研究計画はおおむね順調に進行している、と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
【計画1. 細胞骨格関連分子群と、既知の血管平滑筋異常収縮シグナル分子との相互作用部位の決定】P1以外の細胞骨格関連分子の、既知の異常収縮シグナル分子との相互作用部位を決定する。【計画2. 高感度タンデム型質量分析計による、異常収縮シグナル分子の新規翻訳後修飾の解析】nanoLCの修理が完了次第、Fynの翻訳後修飾の種類と部位を解析する。【計画3. 異常収縮シグナル分子が、細胞運動・細胞遊走に果たす役割の解析】siRNAでノックダウンできた細胞骨格関連分子群について、生体レベルでの解析に向け、より長期的効果のあるshRNAを導入し、細胞運動・遊走に対する影響を解析する。【計画4. 異常収縮シグナル分子の活性制御様式の解析】計画1や2で決定した相互作用部位や新規の翻訳後修飾に対する変異体(以下、変異体)の組換え蛋白質を作成し、既知の異常収縮シグナル分子(Fyn, ROK)の活性化に対する影響を、in vitroキナーゼアッセイで解析する。【計画5. 生細胞および定量的イメージングによる、細胞形態、および、細胞骨格構築制御の解析】変異体を血管平滑筋細胞や腫瘍細胞に導入し、細胞形態と細胞骨格構築の変化を、タイムラプス顕微鏡や、自動細胞イメージング装置により解析する。【計画6. 組織レベルでの解析】変異体の組換え蛋白質をbeta-escinスキンド血管平滑筋標本に導入し、血管平滑筋異常収縮に与える影響を検討する。【計画7. 生体レベルでの解析】[7-1 血管攣縮・新生内膜形成モデルでの解析] 細胞骨格関連分子群や、異常収縮シグナル分子のノックアウト動物に血管攣縮や内膜傷害を惹起し、血管攣縮や新生内膜形成の程度を解析する。[7-2腫瘍モデルでの解析] 生体内で発光するルシフェラーゼ高発現腫瘍細胞株にshRNAを導入し細胞骨格関連分子群や、既知の異常収縮シグナル分子をノックダウン後、ヌードマウスに移植し、腫瘍浸潤・転移に対する影響を解析する。
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