2015 Fiscal Year Annual Research Report
不整脈基質としてのイオンチャネル異常にかかわるマイクロRNA機能制御の解明
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25460292
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小野 克重 大分大学, 医学部, 教授 (40253778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心房細動 / リモデリング / microRNA / IK.ACh / カルシウム過負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNAは蛋白質をコードしていない約22塩基の成熟したRNAであり、特定のmRNAの3’UTRなどに結合して標的mRNAの翻訳や分解を制御する。我々はmicroRNA-30d (miR-30d)が心房細動を持続するヒト心房筋で発現が亢進し、心房筋の電気生理学的性質を担う重要なイオンチャネルであるアセチルコリン感受性K+(KACh)チャネルの発現と機能を抑制することを見いだした。心房細動心筋では心筋細胞の電気生理学的性質が変わり、心房細動が持続・慢性化する原因となる。これを心房細動の電気的リモデリングという。我々はこの電気的リモデリングの主原因の1つがmiR-30dであることを突き止めた。更にこのmiR-30dの発現増加には心筋細胞内のカルシウム(Ca)過負荷が原因であることも明らかにした。心房細動が持続すると頻拍によって細胞内Ca過負荷が生じ、一方ではKAChチャネルの発現を促進すると共に、もう一方ではmiR-30dの発現増加を介してKAChの発現を低下させるという機序を示した。心房細動の持続は心筋のCa過負荷によるCa心毒性を軽減するために活動電位持続時間を短縮させるが,その結果として不応期が短縮し、却って心房細動が持続するという負のスパイラルに陥ってしまった結果であると考えられる。その中心となるもの細胞内Caに起因するmiR-30であることを我々は明らかにした。開心術時に破棄される右心耳の一部を本学倫理委員会と患者の同意のもとで解析し、持続性心房細動心房筋に特有に発現するmicroRNA群を見いだした。機能解析を通してmicroRNA-30d (miR-30d)が心房筋の電気的リモデリングで重要な役割を果たしていることを発見した。これらの結果は、単に心房細動の持続する分子機序を明らかにしただけでなく、1)心房細動の生化学的評価、2)心房細動の慢性化リスクの層別化と治療効果の予想、3)心房細動基質の形成に対する予防的介入という新規観点による心房細動病態の評価に直結する成果といえる。
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Research Products
(4 results)