2014 Fiscal Year Research-status Report
エピソード記憶の保持・想起に関する神経生理学的研究
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25460311
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
堀 悦郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (90313600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 記憶 / 想起 / ニューロン活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、新たに構築した実験システムを用い、2頭のサルに課題の行動訓練を行った。本年度は、課題の行動訓練を継続するとともに、そのうちの1頭についてはニューロン活動記録のための手術を行った。このサルを用い、課題遂行中の海馬体からニューロン活動を記録した。ニューロン活動の記録にはタングステン製のテトロード電極を用い、得られた信号をオフラインでシングルユニットに単離し、課題関連応答を解析した。全ての行動課題をテストできた46個の海馬体ニューロンについて、課題遂行中の活動を詳細に解析した。 その結果、多くのニューロンは場所フィールドを有しており、約30%のニューロンは報酬領域に場所フィールドを有していた。これらのニューロンは、報酬を獲得する前から活動が上昇していることから、報酬そのものに対して反応しているのではなく、報酬獲得というイベントおよびその場所の記憶に関する情報を想起する際に活動が上昇していると思われる。したがって、これらのニューロンは“報酬に関連した記憶の想起”に関与していると考えられる。 一方、44%のニューロンは、サルが向きを変えて(回転)いる際に活動が上昇してた。また、13%のニューロンは、同じ場所を同じ方向に移動中であっても、将来の回転方向に依存して反応が異なっていた。これらのニューロン反応は、単に移動方向や回転に関する情報だけでなく、将来の自己の移動方向に関する情報を含有していることを示している。すなわち、これらのニューロン応答は、上記の“報酬に関連した記憶想起関連応答”とは異なり、空間に関する記憶から現在の自己の居場所と将来の移動方向を決定する空間ナビゲーションそのものに関連した“ナビゲーションに関連した記憶想起応答”と言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行動訓練を終了し、ニューロン活動記録を行っていたサルが死亡したため、ニューロン活動記録に若干の遅れが生じている。 しかし、当初よりこのような場合を想定し、別のサルの行動訓練を始めていたため、現在はほぼ死亡したサルと同等のレベルまで行動課題ができるようになっている。また、ニューロン活動記録に不具合が生じた場合の対応策として、当初に計画した通りの行動学的な試験も実施しており、研究の遂行上は問題ない。
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Strategy for Future Research Activity |
新たにニューロン活動を開始するサルについては、当初の計画通り、まず空間認知に関する行動学的な試験を行った後、ニューロン活動の記録を行う。空間認知に関する行動学的な試験では、外界の空間手がかり刺激を徐々に削除し、サルの行動を決定づける外界の手がかり刺激を調べる。また、特定の手がかり刺激に依存した行動を行っているか否かを確認する。 ニューロン活動記録では、海馬体からの記録を継続するとともに、脳梁膨大後部皮質および前頭葉内側皮質からのニューロン活動を記録・解析し、エピソード記憶の保持および想起におけるこれらの領域の役割について明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ計画通りに進捗したものの、サルの死亡により一部消耗品が未購入であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には別のサルでニューロン活動の記録実験を行うため、未購入の消耗品が必要となるために購入予定である。
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